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⑤絶対間違えられないつらい仕事は、トヨタの自工程完結で、どう変わったか?

絶対に間違えられない膨大な量の
 「つらい仕事」はどう変わったか?


「自工程完結」で
 どのように仕事の質を高めるのか、

 イメージを膨らませていただくために、
 実際のトヨタの事例の紹介から始めましょう。


品質保証部という部署の業務に、
 完成検査終了証の発行業務、と呼ばれているものがあります。

自動車には車検制度があり、
 日本国内では車検を通った車だけが公道を走ることができます。
これは新車も同様ですが、
 国が行う新車車検を、メーカーが検査を行い
 「完成検査終了証」を発行することで代行できる仕組みがあるのです。


トヨタは、検査を合格した証しとして「完成検査終了証」を発行しています。
この業務を担当しているのが、品質保証部でした。


まずは「完成検査終了証」に必要となるデータを社内から集め、
 「完検証マスタ」と呼ばれるデータを作り、
 発行処理をして申請、登録という流れになりますが、
 
この「完検証マスタ」の作成に
 大変な手間がかかっていました。



また、
 「完成検査終了証」に間違いがあったりすると、
 国の登録ですから大きな問題になります。


実際、「完検証マスタ」を作成するプロセスでミスが起き、
 データ修正をして国土交通省に報告をしましたが、
 三日間、車両が登録できず、
 お客さまにご迷惑をかけたという問題が発生したこともありました。

「完検証マスタ」の
 作成でやっかいなのは、
  三つの異なる部門から
  三つの仕様情報を入手し、
  一つのデータに
  落とし込んでいかなければいけないことでした。

20170128完結A


法規部の認証仕様、
 製品企画部の車両仕様、
 国内商品部の受注仕様です。

一台の同じ車の仕様でも、
 三つの部門から見ると
 異なる捉え方がなされます。


認証仕様は
 国土交通省に申請する
  法律上の違いを表す
  言葉が中心の仕様情報で、
 車両仕様は
  製造するうえでの
  部品の種類と組み合わせを表す仕様情報、
 受注仕様は
  お客さまが好みによって選択する色や材料のグレードなどが加わる仕様情報、
 と言えばわかりやすいかもしれません。


それぞれの部門が、
 自分たちの使いやすいように
 必要な情報を仕様に落とし込んで、
 社内情報として流通させていたのです。

そして、
 そうした異なる社内情報から、
 「完検証マスタ」に必要な情報をチョイスして置き換え、
 国に提出する書類を作り上げていくのが、
 品質保証部の業務の一つになっていました。


しかも、
 その数が膨大でした。

これを二人のチームと上司の三人で行い、
 年間で約九〇〇時間が必要になっていた業務でした。
そうした中で、
 起きてはならないミスが起きてしまった。
「完検証マスタ」の作成プロセスで情報を見落とし、
 三人によるチェックまでスルーしてしまったのです。


ストレスを感じているプロセスを洗い出す

膨大な情報と格闘する仕事、
 しかもミスのできない仕事ですから、
 もともとこの
 業務の担当者は
  大きなストレスを受けていました。


社内の三つの部門が
 自分たちに都合よく作った、
 似たような仕様情報から、
 間違いのないよう置き換えをしなければいけない。


置き換えが正しくできているかどうか、
 元の仕様情報と、
 自分たちが置き換えた情報とを照合していく作業は、
 目視で行われていました。
これを半日かけて、
 最大で一五〇〇件も行わなければなりませんでした。
本当につらい作業だったようです。


それだけにミスが起きたことは、
 担当者に衝撃を与えました。

問題が発生したプロセスを特定し、
 誰がどのような業務を行い、
 どのようなチェックが行われ、
 どこでミスが起きたのか、明らかにしました。

一生懸命やっていたのに、
 なぜこんなことが起きてしまったのか。
ほかの作業は大丈夫か。
こんな思いのまま仕事をするのはつらい、
 と感じたと言います。


そしてミスが起きたことをきっかけに、
 この業務を「自工程完結」の
 考え方を取り入れて見直してみる、
 ということが始まりました。


不安をなくし、
 自信を持って仕事を進めるためにも、
 業務を標準化し、
 改善を進め、
 仕事の質を高めていくことを考えたのです。



まずは、
 現状把握から始まりました。

取り組みを進めたのが、
 担当者がどんなところにストレスを感じているのか、
 洗い出していくことでした。

トヨタでは、
 「神経を使うような作業」について、
 「気遣い作業」という表現をします。


やりたくない、
 面倒くさい、この仕事自体が不安……。

そういった気遣い作業を、
 個々人がそれぞれの仕事の
 工程ごとに書き出していったのです。



そして個々人で
 次の三点を評価していくことにしました。

 ・目的理解度
 ・やりにくい作業や面倒な作業はないか
 ・工程ごとの必要なものは明確か
  (各手順を実施するために必要なものは明確か)



これを洗い出した二〇の業務プロセスごとに、
 「◎:まったく問題なし」
 「○:ほぼ問題なし」
 「△:ちょっと不安あり」
  の三つで評価していきました。


 課題があるプロセスを、
  「見える化」していったのです。



20170128完結B


その結果、
 二〇の業務プロセスのうち、
 どこで
 「やりにくい作業や面倒な作業」があるのか、
 「工程ごとの必要なものは明確か」
 がわかっていったのです。


そして、なぜ「気遣い作業」になっているのか、
 要因の解析が行われました。

やらなくてよかった仕事は、
 やはりしなくてよかった
例えば、
 「完検証マスタ」を作成するために、
  お客さまが選択した仕様情報を
前工程にあたる国内商品部から入手していましたが、
  そこで担当者が
  どんな「気遣い作業」を
  していたのかが明らかになりました。


「完検証マスタ」作成のために必要な営業担当者名が書かれていなかったり、
 仕様が変更されたときに
 
何を参照すればよいのかが
 書かれていなかったりすると、
 担当者がすべて自力で調べていたのです。
そこに時間も手間もかかっていました。


そこで、チーム内で相談して、
 必要な情報を明確化したうえで
前工程の部署に情報の必要性を説明し、
 記載してもらうことにしました。


実は前工程では、
 品質保証部が自分たちのデータをもとに、
 そんな仕事をしていたということを知りませんでした。

営業担当者の名前を書いたり、
 変更点を書くことはたいした手間ではなかったと言います。


また、
 先にも書いた半日一五〇〇件の目視による照合は、
 担当者に漫然とした作業を強いていました。

「本当に嫌になる」
「投げ出したくなっていた」
 という声もあったようでした。


作業に納得がいかず、
 やる気が起きない、
 本当につらい、という状況を作っていた。



なぜかといえば、
 実はここでほとんどデータに違いがあることはなかったからです。
そもそも、
 どうしてこの目視での照合が行われているのかといえば、

かつて前工程のデータ作成でコンピュータのバグが発生し、
 データに間違いがあったからでした。
しかし、
 そのバグはすでに解決されていたのです。


照合をやめたらどうなるのか、
 チームで内容を検討しました。
そして前工程にデータの作成方法を確認したところ、
 今は当時のシステムが改善され、
 過去のような不具合は発生しないとわかりました。

ただ、
 まったく照合しないという選択にはせず、
 約一五〇〇件から抜き取った
 最低限の約一〇〇分の一の確認で済ませることができるようになりました。
精神的な負担を解消するだけでなく、
 工数も削減することができました。


この取り組みをきっかけに、
 「作業手順書(伝承シート)」が整備されました。

日々の業務では、
 このシートを確認しながら作業し、
 何か気づいたことはメモに残されるようになりました。

そしてチームで毎週、
 確認会を実施、
 情報共有、
 対応の検討のうえ、
 「作業手順書」が改定されていくという
 サイクルが繰り返されています。


 「◎:まったく問題なし」
 「○:ほぼ問題なし」
 「△:ちょっと不安あり」

 の三つで評価された業務プロセスは、
 その多くが改善されるに至っています。
それにより担当者は、
 自信を持って意思決定しながら仕事が進められるようになりました。


お互いの業務を知ることで、
 前工程との信頼関係が生まれた



品質保証部での取り組みの一つの大きなポイントは、
 コツコツ、じっくりと取り組んだことです。
担当者の
 「気遣い作業」の洗い出しから改善までは、
 実に約一年をかけて行われました。


作業手順書自体は、
 もともと担当者の間では共有されていたようです。

しかし、
 目的や必要なものなどは共有されていなかった。


そのあたりも加えながら、
 しっかり業務を見える化したことで、
 担当者は安心して仕事を進められるようになりました。


そしてもう一つのポイントは、
 これまではなかった前工程とのコミュニケーションが生まれたことです。
お互いの業務を知ることで、
 前工程との協力関係が生まれるようになりました。
前工程では、
 後工程でデータがどんなふうに使われているか、
 認識されていなかったと言うのです。
実は後工程がどんな情報を欲しかったのか、知らなかった。


こちらの苦労がわかれば、
 同じお客さまに向けて仕事をしているわけですから、理解は早い。
ちょっと手間は増えるけれど、
 ちょっとだけだから、やりましょう、ということになったようです。
担当者同士で相談後、
 グループマネージャー同士で確認、承認してもらうプロセスを踏みました。


それまでにも担当者間で電話をすることもあったようですが、
 お互いに顔を合わせてからのコミュニケーションは、
 一気に円滑なものになったそうです。


ミスもなくなり、「気遣い作業」も減った。

もともと、
 後工程に悪いものを出さない、
 という姿勢を強く持っていました。

実はそれは、
 他の部門でもそうだったのです。

ところが、
 後工程が何を求めているのかを理解できていなかった。


今回は、
 それがクリアになった。
そうすると、
 いい流れが生まれ始めました。


入社二年目でこの取り組みを始めてリーダーとなった担当者は、
 
「自工程完結」が
 うまくいった理由をこう語っていました。

歩みを止めないことだ、と。
結果が出るまでには、
 それなりに時間がかかります。
走っている最中はつらくなることもある。
だからこそ、
 歩みを止めないことが大切になると思う、と。



そして、自分の成長を感じることができた、
 とも語っていました。
それが楽しいと思えたようです。
やらされ仕事で、
 毎日、自分が何をしたかもわからない、
 ということはまったくなくなった、と。

「自工程完結」が取り入れられてからは、
 「ここが成長した」と自信を持って言えるようになった、
 と語ってくれました。

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