コーチングの本質

コーチングは、コミュニケーションのスキルです。

こちらが持っている答えや知識を相手に教えることを
 「ティーチング」と言います
が、

一方
「コーチング」は、
 相手に質問を投げかけて、
 考えるきっかけを提供し、
 相手の中にある答えやアイデアや本音を引き出していく方法です。


もちろん、
 状況に応じて、
 ティーチングの方が有効な場合もあれば、
 コーチングの方が有効な場合もあります。

特に
 自立型人材の育成が急務となった現在は、
 コーチングが必要な場面の比重が高まってきています。

ところが、
 元々から教え上手な人が比較的多いのに比べて、
 元々から引き出し上手な人は極めて少ないのが現状です。

そこで、
 引き出す技術としてのコーチングが注目されるに至ったわけです。

「コーチングは
 心理学から出てきたものですか?」とよく聞かれます。
確かに、
 コーチングの手法は、
 心理学的に見て、とても理にかなっています。

しかし、
 コーチングの出どころは学問ではありません。
コーチングは、
 「人材を育てるのが上手な経営者」や
 「部下をやる気にさせるのが得意なマネージャー」、
 「名選手をたくさん育てた名コーチ」
 たちを研究して、
 彼らのコミュニケーションの特徴を体系化し、
 スキルとして習得できるようにしたものです。

コミュニケーションスキルとしてのコーチングの主な機能は次の3つです。
1.相手のやる気を引き出す(内発的モチベーション)
2.相手の自発的行動を促す
3.相手を自立型人材に育成する


また、
 コーチングの主なスキルには
 「聞くスキル」
 「質問のスキル」
 「承認のスキル」
 「伝えるスキル(提案、リクエスト)」
 などがあります。


今回は
 「質問のスキル」の中から、
 すぐに実践できて効果の高いものを
 3つ選んでお伝えします。



4.効果的な3つの質問

1)拡大質問
さて、それでは、実際に使っていただける基本的な「質問のスキル」を、
 3つ選んでお伝えしたいと思います。
まず、質問には
 「特定質問」と
 「拡大質問」があります。

特定質問とは、
 「はい」や「いいえ」で答えられる質問や、
 正解が一つしかないような質問です。


答える人が、
 それほど考えなくても、すぐに答えられる質問でもあります。

たとえば、
 「君は中途入社だったかな?」とか
 「君の出身大学はどこかね?」といったものです。
一方、
 拡大質問とは、
 様々な答えがあるような質問で、
 答える人が自由に考えて答える質問です。

たとえば、
 「君は将来、何をやりたいんだね?」とか
 「今回のトラブルを君はどう考える?」
 といったものです。

コーチングでは、
 後者の拡大質問を重視します。


拡大質問は、
 相手に考えるきっかけを提供するので、
 相手の思考を意識の深いところまで向けることができるのです。

その結果見い出した答えは、
 答えた本人にとっても納得性の高いものになることが多いのです。
また、
 拡大質問は、
 質問した人が予想もしなかったような答えが返ってくる場合も多く、
 質問した人にとっても新しいアイデアや発見が得られる機会になります。

一方、
 特定質問の方は、
 必須の確認事項を確認したり、
 単純な選択を促す時などは便利ですが、
 相手に充分に考えてもらう質問ではないので、
 表面的な答えしか返ってこないことが多いのです。

例えば、
 仕事でミスをした部下に対して、
 「○○○はチェックしたのか?」
 「彼には確認したのか?」
 「ミスの原因は△△じゃないのか?」
 という特定質問ばかり投げかけると、
 部下は、
  「誘導尋問されてる」
  「責められてる」
  と感じてしまう可能性があります。
そうなると、
 原因や解決策を前向きに考える余裕がなくなってしまいます。
また、
 これらの質問は、
 上司の考えの枠組みに沿った質問なので、
 上司が推測できない原因があったとしても、
 それが見つかる可能性が低いのです。
一方、
 「今回のミスの原因は何だと思う?」
 という拡大質問を使えば、
 部下は自分の頭で自由に考えて答えます。

 「それは私としても盲点だった」
 と上司が思うような、
 意外な答えが聞ける可能性も出てきます。
そして、
 何よりも部下の考える力が育ちます。



2)肯定質問
次のようなケースを想像してみてください。
あるプロジェクトを部下に任せたところ、
 結果として、
 そのプロジェクトは8割がた失敗に終わりました。
落ち込んだ部下が、
 上司であるあなたのところに報告に来ました。
 「申し訳ありません。任せていただいたプロジェクトは、
  8割がた失敗に終わりました。」


 さて、
 ここでその部下に、
 どんな質問を投げかけますか?


ものごとの否定的な側面に焦点を当てる質問を
 「否定質問」といいます。

例えば、
 「なぜ失敗したんだ?」とか
 「どんな失敗をしたんだ?」
 という質問です。
これらの質問は、
 一般的には、
 部下の思考を「言い逃れモード」にしてしまいます。
 「言い逃れモード」になった部下からは、
  前向き・創造的な解決策や改善案はほとんど出てきません。

逆に、
 言い訳を見事に見つけて並べてきます。



コーチングのモデルになった
 「人材育成の達人たち」がよく使うのが
 「肯定質問」です。

これは、
 ものごとの肯定的な側面に焦点を当てる質問です。

例えば、
 「8割がた失敗ということは、
  2割はうまくいったんだな。
 どんなことがうまくいったんだね?」という質問です。


この質問に対して、
 部下は、うまくいったことを話しているうちに、
 思考が前向きになってきます。

この前向きな状態を「解決思考モード」と言います。
この状態になってから、
 8割の話に移っていけば、
 前向き・創造的な解決策を引き出しやすくなるのです。


コーチングの研修を受けていただいた予備校の教師の方達から、
 研修の1ヶ月くらい後で聞いた話が印象的でした。

「肯定質問はすごい!」
 とほとんどの方がおっしゃるのです。

以前は、
 生徒から「先生、わかりません。」と言われたときに、
 「どこがわからないんだ?」
 という否定質問を、
 ほぼ全員が使っていたそうです。

ところが研修を受けて以降は、
 「どこまでわかっているんだ?」という肯定質問に変えたとのことです。
すると、
 生徒はわかっていることを答えているうちに、
 さらに考えが整理されてきたり、
 中には、
 正解までたどり着いてしまう生徒もたくさん出てきたそうです。
肯定質問は、
 相手の脳の創造性を引き出すのです。

肯定質問は、
 やる気も引き出します。

例えば、
 問題に突き当たっている部下に、
 「この問題を解決しないと前に進まないんだな?」
 と否定質問をすると、
 ますます暗い雰囲気になってしまいますが、

 「この問題さえ解決すれば、
  前に進むんだな?」という肯定質問に変えるだけで、
  前向きな雰囲気に変わって、
  やる気が出てきます。


3)未来質問
さて、先ほどの「任された仕事を8割がた失敗させてしまった部下」
 の話に戻りましょう。

肯定質問を使って、
 うまくいった2割のことを聞き出し、
 部下も「解決思考モード」
 になってきたとします。

失敗を繰り返さないためにも、
 次は、
 8割の失敗についても聞き出して、
 解決策を探らねばなりません。

ここで、
 どんな質問を投げかけますか?


ここで非常に有効なのが
 「未来質問」です。


「どうして失敗したんだ?」と
 過去に向けて問う「過去質問」に対して、

「未来質問」は、

例えば
 「次回成功させるためには、
  どうすればいいと思う?」のように、
  未来に向けて問う質問です。

過去質問だと、
 答える部下の意識は、
 過去の記憶にアクセスします。
過去の記憶は変わることがないので、
 脳の想像力や創造力が働かないのです。
一方、
 未来質問は、
  部下の意識を未来に向けます。


未来には様々な可能性があるので、
 脳の想像力・創造力が活性化するのです。


「ブレイクスルー(現状突破)を起こすアイデアが生まれるのは、
 原因追求型の思考からではなく、
 目的追求型の思考からである」
 (参照:「ブレイクスルー思考」G・ナドラー&日比野省三
 著、ダイヤモンド社)と言われていますが、
 とても簡単に目的追求型の思考を引き出すのが、
 この未来質問なのです。

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すぐに実践できて効果のある「3つの質問」

なぜコーチングを導入する企業が増えているのか?
ここ数年、モチベーション向上法および
 人材育成法としてのコーチングが非常に注目されるようになりました。
最初に、
 どんな背景でコーチングが注目されるようになってきたのか、
 その背景から整理してみましょう。

1)外発的モチベーションの効力低下
人を外部から動機づけしていく方法を外発的モチベーションと言います。
別の表現をすると「アメとムチ」がこれにあたります。

例えば、
 「業績を上げれば昇進・昇給する」
 「仕事でミスをしたらペナルティーがある、叱責される」
 などの仕組みです。

もちろん、
 企業において、この外発的モチベーションは必要です。
 そして、
  経済が右肩上がりの時代は、
  「頑張って昇進したい」
  「豊かになっておいしいものを食べたい」
  という欲求を持つ人が多かったため、
  外発的モチベーションがその欲求を刺激し、よく機能しました。


しかし、
 時代が変わり、
 この外発的モチベーションだけでは
  社員のやる気を維持できない時代になってきました。

 「成果主義を導入したものの、社員のモチベーションが上がらない」
  という話はめずらしくありません。
この外発的モチベーションが通じにくい傾向は、
 若い人ほど顕著です。
子どものころからおいしいものを食べてきた世代は、
 頑張って稼ぐことにハングリーになるよりも、
 精神的な充足感・満足感を大切にする方を好む傾向にあります。

その傾向を代表する言葉は、
 「昇進はそこそこでいいので、もっと休日を下さい」です。
この傾向は、
 現在の大学生・高校生が社会人になるころは、ますます強まっていくと言われています。

一方、
 本人の中から精神的な充足感・満足感を引き出し、
 それによって動機づけしていく方法を内発的モチベーションといいます。
この内発的モチベーションは、外発的モチベーションよりも強力で、
 持続性があり、かつ、創造性を生み出します。
また、
 若い世代に対しても非常に有効です。
今、企業は、
 外発的モチベーションの仕組みに加えて、
 社員の内発的モチベーションを引き出す手法が必要とされる時代に入ったと言えそうです。


2)顧客ニーズの多様化
1990 年代に入って、
 企業を取り巻く環境の変化が激しくなり、
 そのスピードは加速化してきています。


例えば、
 市場構造は、
  メーカー主導から消費者主導へ、
  企業主導から顧客主導へと急速に転換しました。

そして、
 顧客ニーズはますます多様化しつつあります。
 「いいものを作れば売れる」
 「よい仕事をすれば売れる」という時代から、

 「今、顧客が求めているのは何か?」
  を的確に把握し対応していかないと勝ち残っていけない時代にシフトしてきたわけです。

企業にとって、
 多様化する顧客ニーズを的確に把握し、
 環境変化のスピードに迅速に対応するためには、
 以下の2点が重要なポイントになってきました。


①情報のボトムアップ
顧客情報・現場情報がトップにまで上がっていくには、
  「部下の声に耳を傾けるマネジメント」
  を組織に浸透させる必要があります。

 
部下から上司への報連相を増やすために、
  部下に報連相のやり方を教えるだけでなく、
  上司側にも「部下から情報を引き出すスキル」
  が必要になってきました。


②自立型人材
環境変化のスピードの中にあって、
 言われたことしかやらないマニュアル型社員では、
 そのスピードに対応できなくなってきました。

 そこで、
  自ら考え、自ら行動し、自ら成果を創り出せる
  「自立型人材」を育成する必要性が出てきました。

 自立型人材は、
  臨機応変に、柔軟な対応ができる力を持った人材と言うこともできます。

「質問」に関するスキル

20160730 質問
「拡大質問」と「特定質問」

「質問」に関するスキル

部下とのコミュニケーションのなかでもっとも重要となる
 「質問(問い)」に関するスキルです。

「問い」が持つ効用については、
 これまでにご説明したとおりですが、
 一口に「問い」といっても、
 実にいろいろな種類があります。

その中でも、
 上司が部下をコーチングしていくなかで、
 是非知っておいていただきたい質問の仕方が3種類あります。 

それは、
 「拡大質問」
 「未来質問」
 「肯定質問」
 の3つです。

また、これらの質問には、
 それぞれ〝対〟となる質問が存在します。
それは、
 「特定質問」
 「過去質問」
 「否定質問」
 というものです。
20160730 質問


「拡大質問」と「特定質問」
はじめに、
 一番目の「拡大質問」と「特定質問」について考えてみましょう。

まず、
 
特定質問とは、
 問いを投げかけられた人が、
 それほど考えなくてもすぐに答えられるような質問を言います。

 たとえば、
  「君は今年で入社何年目だったかな?」
   「3年目です」といった質問です。

  また、
  「はい」や「いいえ」
  で答えられるような質問も特定質問になります。

 「君は独身かね?」
  「はい」といったやりとりです。

では、
 拡大質問とはどのような質問をいうのかというと、
 それは、
 問いを投げかけられた人が、
 すぐには答えられないような質問、
 あるいは正解が複数あるような質問を言います。

たとえば、
 「君は将来何をやりたいんだね?」
 「君にとって一番大事なことはなんだい?」
 といった質問です。

前に述べたように、
 コーチングで使うのは、
 主に後者の拡大質問です。

なぜなら、
 同じ質問でも拡大質問の方が特定質問に比べ、
 社員に考えさせる習慣を身に付けさせることができるからです。
拡大質問の「拡大」とは、
 まさに相手の持つ能力や可能性を拡大するという意味合いをも含んでいます。
部下の可能性を引き出すひとつの方法として、
 可能な限り、
 特定質問をなくし拡大質問を多くするように心掛けてみてください。

「指示」「放任」「傾聴」「対話」 マネジメントの4タイプ

マネジメントの方法は
 「指示」「放任」「傾聴」「対話」
 の4タイプ


 マネジメントのタイプは、
 以下の4つのどれかに分類されます。

マネジメントの4タイプ

指示型(order)マネジメント
 「何をするか/どうするか」示す

放任型(delegate)マネジメント
 「何をするか/どうするか」任せる

傾聴型(listen)マネジメント
 話をよく聞く(カウンセリング・マインド)

質問対話型(ask&communicate)マネジメント
 質問を通して相手から引き出す(コーチング)。
 自分で考え、行動する思考様式を育てることで、
  即効性があり、長期的な成果をもたらす。


「指示型」は、
 「キミはこれをこうやって」
 「この件はこうして」といって、すべて指示するタイプです。

また、
「放任型」は、
 「来月までにこういう結果を出しておけばいいから」といって、
 任せるタイプのマネジメントです。

多くのマネージャーが、
 この指示型と放任型を行ったり来たりします。
これをやれ、あれをやれ、とたくさんの指示を出していると、
 部下はだんだんついていけなくなり、
 ちょっと無理です、と反抗するので、
 じゃあ、勝手にしろ、その代わり結果は出せよ、
 といって放任型に移ります。

しかし
 2週間後にフタを開けてみると、
 うまく進んでいないので、なんだダメじゃないか、
 オレの言う通りやれよ、と再び指示型に戻る、といった感じです。

この2つのマネジメントを行き来する間に、
 3つ目の「傾聴型」が入る場合があります。

これをやれ、あれをやれと指示を出しているのにうまくいかないと、
 「どうしたんだ?」と、部下の話を聞き始めます。

例えば
 「実は家でこういう状況があって」とか
 「あの取引先が文句を言ってきて」というような話を聞き始めます。

でも、
 それでも改善されないと、
 再び指示型になり、
 それでダメだったら放任型になり、
 ああ大変なんだな、と傾聴型に――という感じで、
 この3つを行ったり来たりします。

実は、
 じっくり話を聞く傾聴型マネジメントは、
 コーチングではありません。


コーチングは、
 相手に質問しながら
 答えを相手から引き出していく方法です。


よく、じっくり話を聞くことがコーチングだと言われる節がありますが、
 違いますので注意してください。


20160716 02


マネジメントによって、
 時間の掛け方や成果、
 部下のやる気の出方が異なります。

まず、
 最も時間が掛からないように思えるのが放任型です。
 「○日までにやっておけ」と言っておけばいいので、
 そのときは時間が掛かりません。

しかし、
 フタを開けてみると何もできていない、
 部下が急に3日間も休んで、
 オレが全部やらなきゃいけなくなった――
 というようなことが起こり、予期せぬ忙しさになります。

 部下がヘマをやって、
 その後、上司が出てくる、というパターンがこれです。

放任型より時間が掛かるのが
 指示型です。
ああやれ、こうやれと指示するので、
 自分で管理ができます。
ただし、部下が増えすぎると
 上司のほうがあっぷあっぷしてきます。
4~5人くらいだったら全部自分で管理できますが、
 10人を超えるとわけが分からなくなり、
 もういい、勝手にさせておけ、みたいな感じになってしまいます。

指示型より時間が掛かるのが
 傾聴型です。
傾聴型マネジメントは
 1人1人の悩み相談をするようなものなので、
 膨大な時間が掛かります。

そして、
 最も時間が掛かりそうなのが、
 質問対話型(コーチング)です。

なぜなら最初に、
 「キミはどういうきっかけでこの会社を選んで、
  何をやりたくて、どんな才能があって、
  どのプロジェクトを、
  どういうふうにやっていきたいのか」
 というようなことを全部聞いていくからです。
たいていの人がコーチングをあきらめてしまうのは、
 ここで時間がかかるからです。
こんなに
 即効性のないマネジメント方法はやっていられない、
 ということになります。


ところが、
 中長期的に見ると、
 コーチングは
  傾聴型よりも、
  指示型よりも時間はかかりません。

コーチングの場合、
 質問は意図を持ってピンポイントでするため、
 傾聴型より話を聞くのは短時間で済みます。

また、
 言われたままのことをする指示型に対して、
 
コーチングは部下が自分で考えるようになり、
 そのうち自分で自分に質問できるようになります。
最初のうちに時間をかけてでも、
 このスキルを身に付けることができると、
 部下は、うまくいかなかったり迷っていたりするところだけを
 上司に相談するようになるので、
 最終的には指示型よりも時間がかからなくなるのです。


成果が出るのは
 「対話」>「指示」>「放任」の順。

 「傾聴」は未知数

20160716 03


次に、
 成果が上がるかどうかの観点で見てみます。

できない部下に
 放任型で対応すると、
 成果は全く出ません。


「キミに任せるよ、信頼しているよ!」といっても、
 部下としては
 「全然分からないのに教えてくれない」ということになってしまいます。

反対に、
 できる部下に対しては
 放任型でかなりの成果が出ます。


「来月までにこんな結果を出してね。
 僕のやり方じゃなくていいから」と任せると、
 部下は自分で工夫して取り組むので、結果が出ます。

そこそこ成果が出るのが指示型です。

能力の範囲で指示されたことをやるので、
 できる部下もできない部下もそこそこの成果を出します。

慣れてくるとたいていの上司が、
 できない部下には指示を出し、
 できる部下は任せるという傾向になります。


ところが、
 そうすると、できる部下が寂しさを感じることがあるのです。
「上司はできない部下とばっかり一緒に動いている。
 私はこんなにがんばって結果を出しているのに、
 あまり注目されていない」と感じる。

上司はあっぷあっぷなのに、
 部下は放っておかれていると感じる、
 そんな食い違いが出てきます。

傾聴型に関しては、
 成果が出るかどうかは未知数です。


カウンセリング・マインドを取り入れようとしている企業もあるようですが、
 あまり広まらないのは、
 成果が上がるとは限らないからだと思います。

ただでさえ忙しいプレイングマネージャーが、
 時間を取って話を聞き、
 部下から感謝されても、
 「自分はカウンセリングをしに会社に来ているんじゃなくて、
  売り上げを上げるためにいるんだ」という気持ちになる。
また、会社としても、
 上司がカウンセリング・マインドばかり学んで部下をいやしていても困ります。
カウンセラーとして雇っているわけではなくて、
 売り上げを上げてもらうためですから。
はっきり言ってあまり業績にはつながりません。

そして、
 対話型のコーチング。

この場合、
 できない部下に関しては、
  ある地点までは指示型よりも成果は低いです。
しかも、
 コーチングで
 「キミはどうなればいい? 
  障害は何だと思う? 
  できることは? 
  できないことは?」

 などと部下に聞いているときに、
  部下の反応が良くないと、
 「この人はダメだ。
  自分がいちいち言ってやらないとダメだ」と思ってしまいます。
 これがつらい時期です。

でも、
 2週間、3週間とやっているうちに、
 部下は「あの上司、ああいう質問をしてくるな」と、
 自分で考えるようになります。


部下が自分で考えるようになると、
 指示型よりも成果が抜きんでる瞬間がやってきます。


でも、
 多くの上司がここまで待てなくて、
 自分で手を出してしまうのです。


できる部下に関しては、
 対話型のコーチングを使えば
 放任型より成果が出るのは間違いありません。


対話の中で、
 部下は
 仕事のやり方のメリット/デメリットに気づかされます。

何よりも、
 ほったらかしにされていない、
 注目されている、ということが分かります。

また、
 上司にとっては
 時間が取れるのがコーチングのいいところです。

対話型なら、
 指示型のように、
 できない部下をすべてチェックしないで済む分、
 余裕ができて、できる部下のために時間を取ることができます。


やる気が出るのは
 「対話」>「傾聴」>「指示」>「放任」の順


部下のやる気が全然出ないのは
 放任型です。


できない部下をほったらかしにしていて、
 彼らにやる気が出るはずがありません。

次にやる気が出ないのは
 指示型です。


「結局、私は言われた通り動く駒でしかない」というような気持ちになります。

特に、
できる部下は
 指示ばかりされるとやる気がなくなります。


できない部下は、
 指示されるとホッとする部分もあるでしょうが、
 それでもいつの日か、「私って何だろう」という気持ちになります。


それよりもやる気が出るのは
 傾聴型です。


話を聞いてもらえると誰でもうれしいものですから、
 やる気は出ます。
また、
 できる部下には放任型で対応しても、
 傾聴型と同じくらいのやる気が出ます。

しかし、
 なんといっても
 やる気が出るのは対話型です。


こうしてみると、
 やる気が出るのも対話型ですし、
 成果が出るのも対話型、
 つまりコーチングです。


ただし、
 最初に時間がかかりますし、
 できない部下だとなかなか成果が上がらないという部分で、
 勇気が必要なマネジメント方法といえるでしょう。

コーチングとティーチングをどう使い分けるか?

コーチングは効果的なマネジメント方法ですが、
 「教え込む(ティーチング)」ことが必要な場合もあります。


部下の習熟度によって、
 コーチングとティーチングの割合は変わっていきます。

20160716 01


図は縦軸がティーチングとコーチングの採用する度合い、
 横軸が部下の習熟度です。

例えば、
 新卒で昨日配属された人に対して、
 「キミはこれがどうなればいいと思う? 
  何ができると思う?」と
 聞いても、
  部下は困ってしまいます。


いくらコーチングしても答えを引き出すのは、
 まず無理です。


この場合は、
 「こういうときには、この方法。
  こんなときは気を付けて。
  これとこれは調べておいたほうがいい」

  というようなティーチングの割合を多くします。

ところが、
 10年も働いてきた人に、
 いちいちティーチングをしたら、
 「そんなこと教えてもらわなくても知ってるよ!」
 という気持ちにさせてしまいます。

そういう人に対しては
 コーチングの割合を増やします。

「前の会社にいたときには、
 どういうところに気を付けていました? 
 どんなスタンスだったんですか? 
 お客さんにどんなふうに接していました?」


と一通り聞いて、
 相手の意見を引き出すようにします。

すると、
 「なるほど、それは面白いですね」という話が出てくるかもしれないし、
 「そこに関しては、うちはこういうスタンスなので気を付けてください」

 と、
 伝えることもあるでしょう。

例えば、
 クルマの縦列駐車を教える場合を想像してみてください。
初心者やペーパードライバーの人には、
 教習所で教えるように、
 クルマを置く場所から目安の見方、
 ハンドルを切る回数やタイミングまで、
 何もかも教えてあげなくてはいけません。
ところが、
 クルマを何年も乗っている人に、
 縦列駐車のやり方を一から教えてあげるというのは、
 ちょっとくどい。
むしろ、
 そのやり方で駐車するほうが難しいということにもなります。

そういう人にはコーチングです。
どのへんに気をつけてやってますか? 
 と相手から答えを引き出すようにすると、
 その人なりのコツが出てきます。
このように、
 相手の習熟度が高ければ高いほど、コーチングの割合を多くします。


その人に聞いてみるといいでしょうね。
「専門的な仕事をやっていたようですが、
 どういうところに気を付けていましたか? 
どんなところに誇りを持っていますか?」と。
たぶん、とうとうと語ってくれると思いますよ。
そうすれば本人の自尊心が満たされますし、
 聞いてくれた人に対して好感を持つはずです。
そして、
 「専門職でうまくやっていた部分を、
  プロジェクトで生かすとしたらどんなふうに生かしますか?」
 というような質問をします。

そうしたら、
 できること、できないことを答えてくれるでしょう。
自信がないという部分はティーチングを増やせばいいし、
 生かせる部分は「ぜひ生かしてほしい」とお願いします。

要は、
 相手のプライドをくじかないことです。
とかく「専門職とは違うんだから。お前、こうじゃなきゃダメだ!」とやってしまいがちですね。
確かにそうなんですが、
 そうすると、
 その人の今までの実績がゼロになってしまいます。
生かせるものは、生かしていきたいものです。

困るのは、
 専門職時代の思いをとうとうとしゃべって、
 新しいプロジェクトでもこんなふうにやってみたいということが、
 明らかに「違うだろ!」という場合です。
この場合は、
 私メッセージです。
「なるほど、キミのこういう部分は生かせると思う(Yes)。
 そして(and)、
 私の意見だと、
 ここの部分はこうしたほうがよりよくなると思う」と、
 私メッセージで伝えます。
たいていの人はそれを聞き入れるはずです。

ところが、
 「いや、僕のやり方でいけます!」という人がまれにいます。
そのときは、
 説得しようとはせずに、引き出すスキルで対応します。
「なるほど、そう思うんだね。じゃあ1週間後、どうなっていればいい? 
そのために何ができる? 
じゃあ、1回それでやってみよう」とやらせてみます。
上司に「こんなの無理だよ」という気持ちがあると、
 部下はけんか腰になるので、完全にニュートラルな気持ちで対応してください。
そして1週間後、
 「どうなった?」と聞きます。
「ダメでした。やっぱりこのやり方はマズイですね」と、
 本人が気づいてくれれば話が進みますよね。

このコーチングをせず、
 「できます」といいながらできないまま、
 本人の気付きもないままになってしまうと、
 放任型になってしまいます。

コーチングは、
 放任や傾聴と似て非なるものです。
任せることが大事だといって放っておけば、
 それはコーチングではありません。
また、
 部下が話したいことを、ただじっくり聞くというのも、
 カウンセリングではあってもコーチングではありません。
上司にすでに答えがあって、
 部下に気づかせる質問をするという方法もあるようですが、
 それもコーチングではありません。
それはコーチングの仮面をかぶった指示命令です。
世の中のコーチングの誤解がこの部分です。

コーチングの成果が出ないというのは、
 それがコーチングではなく、
 放任や傾聴になっているからです。
コーチングでパフォーマンスが落ちることは、
 まずありえません。
確かに無理やりやらせようとするとパフォーマンスは下がります。
また、
 「あの人がこんなにひどいからうまくいかないんだ」という部下に対して、
 「ああそうか、大変だな、キミも」みたいな傾聴型の対応では、成果につながりません。

部下がほかの人に対して不満を持っている場合は、
 「そうだよな(Yes)」で一通り受けてください。
そしてその後、
 「だけど(but)」にはしません。
「なるほど。ところで、キミはどういうふうになればいいと思う?」と聞きます。
部下が答えたら、
 「では、そうなるために、キミにできることは?」と進めます。
「そんなものない。アイツらをクビにしてくれないとできない」と答えるかもしれません。
そのときも、
 「だけど」はナシで、粘り強く聞いてください。
目標に対して達成度はどれくらいか、
 達成度が0.5でも1でも上がったとしたら、
 どうなっているか、
 そこに向けてできることはないか、といったことを聞いていきます。

この方法は、
 上司の行きたい方向を指示しているわけではないし、
 相手のことを聞いているだけでもありませんし、
 ほったらかしているわけでもない。
ニュートラルな立場だけど、
 しっかり軸を持ってリーダーシップを発揮しています。これがコーチングです。
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