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⑲「自工程完結」はトヨタに何をもたらしたのか(4)

「自工程完結」推進を唱えるとき、私がよくする話があります。人間には、三つのやることがある、ということです。「やるべきこと」「やれること」「やりたいこと」です。

「やるべきこと」と「やりたいこと」がくっついている人は、きわめて使命感の強い人だと思います。これをやらないといけないんだけど、本当はやりたくない、という人は残念ながら、あまりいい仕事ができない。

 また、「やるべきこと」と「やれること」がイコールだという人は、端的に能力がある人、ということになるでしょう。

 では、「やりたいこと」と「やれること」がくっついてしまった人は何かというと、これは自分勝手、ということになります。




 しかし、往々にしてあるのです。「やれること」と「やりたいこと」がくっついてしまい、「やるべきこと」がどこかに飛んでいってしまう人が、です。だから、「やれること」と「やりたいこと」をくっつけてしまわないように、気をつけなければいけないのです。そのために、「やるべきこと」を常に意識する必要があるのです。

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「自工程完結」というのは、すなわちこの「やるべきこと」を意識することが重要で、「目的・ゴール」は何か、というところから始まり、それを達成するために、「プロセス/手順」や「判断基準」「必要なもの」を決めていく。

 つまり「自工程完結」があれば、「やるべきこと」と「やれること」をくっつけることができるのです。そこに「やりたいこと」が加わればベストですが、これこそまさにモチベーションということになるでしょう。

「やるべきこと」と「やれること」がうまく合わさって結果が出るようになれば、それはやがて「やりたいこと」になっていく可能性は高いと私は考えています。三つの輪が、見事に重なってくるということです。
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⑱「自工程完結」はトヨタに何をもたらしたのか(3)

『トヨタの自工程完結』のもとで、さまざまな仕事のプロセスや仕事のやり方を洗い出すことには、たくさんの利点があると思っていますが、その一つが、何度も触れているように、業務の流れとかかわる組織が見えてくることです。

 自分たちの仕事の前工程、後工程がどのようなもので、いったい誰がそれをやっているのかが、はっきりとわかることは、重要なメリットです。

 実際には、会社の業務はきわめて複雑に入り組んでいます。この意思決定をするために必要なこの情報は、別の部門からもらわないといけない。あるいは、この意思決定は、別の部門の意思決定を経てからでなければできない。そうした業務はたくさんあります。

 これがかなり入り組んだ、複雑な組織もあります。そこで私たちは、自動車を製造する際、工程改善に使っている「TLSC(トータル・リンク・システム・チャート)」という業務フロー図を活用することにしました。




 TLSCは、複雑怪奇に入り組んだ自動車のサプライチェーンなど、複雑な工程を見えるようにした図です。例えば、自分の作成した帳表(情報)がどこの部署の仕事に使われているのかがわかります。万が一その帳表が予定した期日までに作成できなかった場合、その帳表の情報を使って仕事をしているすべての部署に、遅れることを連絡する必要があります。

 新型車を開発し、生産、販売していくうえで、ある部品の設計情報は、車の生産にかかわる部署だけでなく、車の取り扱い説明書や、販売店でお客さまにお見せする車のカタログなどを作成している部署においても、活用しているのです。

 実は一時、業務のプロセスがどのように流れているか、ある部門で壁に紙を張って書き出したことがありました。ところが、これが大変な量になったのです。

 この業務プロセスを進めるには、別のこの部門の人たちが決めておいてくれないといけない。そういうことを一つひとつ紙に書き出すと、相当手間のかかる作業になると思いました。

 そこで、TLSCを短時間で作成できるソフトを使うことにしました。ソフトに必要な情報を入力すると、業務プロセスと各プロセス間の情報のつながりがわかる図が自動で書き上がるのです。また、前工程、後工程がそれぞれに作成したTLSCをそのソフトで簡単につなげることもできます。

 これには、当該部門の担当者も驚いていました。このソフトにより、自部署の仕事の流れを書き出し、前後工程と仕事の流れの不整合を確認・改善する動きが加速しました。

前工程、後工程がどの部門か、はっきりと把握する

 例えば、A部署が決めなければB部署は決められないのだが、逆にA部署が決めるためにはB部署のデータが欲しい、といった矛盾が見えてきたりする。どちらかが先に決断をしなければいけないのです。お互いに「あの部署は……」と待っていると、未来永劫決まらない、などということになりかねない。

 では、どちらが先に決めるべきか。どんなふうに情報を流すべきか。それが見えてくる。

 また、こちらが決めたことがあちらに影響するし、あちらの決めたことがまた、こちらが先に決めたことに影響してくる、といったことがすべてのところで起こりうるのだ、ということにも気づけます。

 つまりは、すべての仕事はつながっているのです。前工程であり、後工程なのです。自分たちがきちんと仕事をしなければ、後工程が困る。後工程が何を期待しているのかに気づけなければ、後工程が満足してくれる仕事はできない。こういうことに、どんどん気づいていくのです。

 そうすると、部門同士のコミュニケーションがきわめて円滑になります。お互いの仕事が見えることで、すぐに解決方法が見つかるのです。

 だから、「自工程完結」に取り組むことで、部門間のコミュニケーションがとてもよくなりました。

 もちろん、すべての仕事をすべての部門とつなげていくのは難しいかもしれません。ただ、階層の上のポジションの人たちは、やはり知っておいたほうがいい。トヨタでは、だいたい三階層から四階層で、全体をカバーするようにしています。

 部長が見るレベルと、グループマネージャーが見るレベルと、担当者が見るレベルは異なります。部長はより大きな視点で見ていきますから、担当者のレベルまではとても見きれません。したがって、階層が下りてくると、仕事の精度はどんどん細かくなっていきます。自分のカバーすべき範囲をしっかりこなすことが、「自工程完結」の完成度につながるのです。

 もちろん、すべての会社にTLSCがあるわけではありません。もし、似たようなプログラムがあるなら、「自工程完結」の考え方に使うことができます。もし、プログラムがないなら、それこそ大ざっぱでもかまわないので、仕事のプロセスと組織とのつながりを紙に書いて進めることも有効だと思います。

 大事なことは、自分たちの業務がどこで前工程になり、どこで後工程になるのか、ということをしっかり把握しておくことです。それぞれのプロセスで、どうつながっているのかを理解することです。そうすることで、前工程、後工程の部門とのコミュニケーションが図れる。これができれば、自分たちの仕事が大きく効率化していく可能性が高まるのです。

⑰「自工程完結」はトヨタに何をもたらしたのか(2)

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現実的に言えば、ここまでしっかりできている組織は、まずありません。通常は、何かが足りないものです。会社が求めている「自工程完結」の考え方にそぐわない仕事をしている、ということ。だから、「自工程完結」の考え方を使ってより良い組織にしていきましょう、という認識を深めてもらうためのシートとして使っています。

「PDCAレベルアップシート」には、まさに「自工程完結」に基づく仕事のプロセスが並んでいます。意思決定の連鎖と、仕事に必要なものを理解することができます。要するに、こういうことをきちんと考えて仕事をしてほしい、ということです。

「仕事の手順」や「判断基準」では、書類に書いていたり、上司の合意を得ていたり、関係者・関係部署の合意を得ているばかりでなく、すでにある知見(標準、失敗事例など)を活用してほしいのです。




「段取りをした後の仕事の進め方」では、計画書(企画書)や標準書に基づいて仕事を進めていってほしいし、進捗状況を逐次、上司や関係者・関係部署と共有してほしい。

「仕事の振り返り」では、目標に対してどこまでできたか(結果)を確認してほしいし、プロセスに対して振り返りを行ってほしい。さらには、振り返り結果を文書に落としてほしいし、上司の合意を得てほしいのです。

「知見の蓄積と伝承」では、必要な人が必要なときに書類やデータを活用できるよう、残しておいてもらわないといけません。それがしっかりできているか、問われてくるということです。

⑯「自工程完結」はトヨタに何をもたらしたのか(1)

「自工程完結」の導入から数年も経つと、「自工程完結」という名称を使うかどうかは別にして、仕事の質を改善させるための動きをしている組織と、そうでない組織には、差が出てくるようになっていきました。




 新しい取り組みをやっていない組織は、失敗の数が減らないのです。相変わらず、やり直しを何度もやっている。時間もたくさんかかっていました。また、会議が減っていませんでした。自分たちの業務がどんなふうに走っているのか、よく理解できていないから、すぐに調整会議という名の会議を入れたくなってしまうのだと思います。

 しかし、業務プロセスをしっかり洗い出していれば、必要な担当者同士でしっかりコミュニケーションを交わすことができます。事例にもあったように、前工程と後工程でお互いに仕事を理解し、必要な情報を把握していれば、担当者同士のコミュニケーションで済み、大ざっぱな会議など必要なくなっていくのです。

「自工程完結」的な取り組みを、より意識してもらうために、いろいろなツールも作り、進化させていきました。

 例えば、社内で「PDCAレベルアップシート」と呼ばれているものも、その一つです。管理者やスタッフに使ってもらっています。

 これは、ある業務において、「自工程完結」の考え方がどのくらいできているかを測るためのチェックシートです。

「仕事の目的」「仕事の目標」「仕事のアウトプット」「仕事の手順」「仕事の途中で特に重要なタイミング」「判断基準」「仕事を実施するにあたって必要な情報・モノ・人の能力・注意点」「段取りをした後の仕事の進め方」「仕事の振り返り」「知見の蓄積と伝承」という一〇の項目について、それぞれ二~四のチェックリストに答えていく、というもの。

「仕事の目的」であれば、
□お客さまのニーズをふまえたものになっている
□書類に書いてある
□上司の合意を得ている
□関係者・関係部署の合意を得ている

 といった具合です。それぞれで、どこまで深く意識し、取り組みを進めているか、自己評価してもらうものです。
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⑮トヨタの自工程完結のメリット9~10

メリット9~10を紹介します。

[メリット1] 部分最適がなくなる
[メリット2] 上司が進捗確認できるタイミングを作れる
[メリット3] 上下左右のコミュニケーションが深まる
[メリット4] 各部署の固有の強みを最大限に活かせる
[メリット5] 部門内の情報共有が進む
[メリット6] 会議が減る
[メリット7] 理不尽なところが見える
[メリット8] 失敗が減り、妥協がなくなる
[メリット9] 生産性が上がる
[メリット10] モチベーションが上がる



[メリット9] 生産性が上がる

 その一つは生産性が上がることです。


工場では
 常に生産性向上の具体的な目標があり、
  そこにこの考え方が大きく寄与したことはすでに書きました。
 「プロセス/手順」を洗い出すことで、
  実は必要のないプロセスに時間をかけていたことがわかり、
  工程数そのものを減らしたケースもありました。


この新しい考え方になってからは、
 仕事をトータルに見ていくことで、
 全体で生産性向上を図ろうという空気に変わりました。
かつては課ごとに目標が与えられ、
 生産能率を評価されて給料が決められていたものが、
 今は全社平均で判断されるようになっています。
全社で数字が上がれば、
 全員の給料が上がるのです。


スタッフ部門の仕事でも、
 「目的・ゴール」に立ち返ることで、
 実はそれほど必要のない仕事だったことがわかり、
 業務そのものをなくしたケースがあります。
また、自分たちの部門のみならず、
 関連する部署や取引先ともコミュニケーションをとり、
 業務をなくすなど、効率化したケースもありました。


そしてもちろん、
 個々の仕事の生産性もアップしました。
「自工程完結」の考え方を用いることで、
 上司とのコミュニケーション・ギャップが減り、
 やり直しが大きく減ったのです。

[メリット10] モチベーションが上がる

二つ目のメリットは、
 「自工程完結」の考え方で仕事を進めた結果、
 モチベーションが上がることです。

一生懸命頑張っているのに、
 正しい結果が出ない。
これが、
 モチベーションを阻害している
 最大の要因だと私は感じていました。

「自工程完結」の考え方を用いるとは
 つまり、
 正しい結果が出るための、
 正しい仕事のやり方が理解できる、ということです。
一生懸命にこのとおりにやれば、
 結果が出る。
これだけのことをやれば絶対に大丈夫だと、
 みんなが自信を持って仕事を進められるようになる。


言葉を換えれば、
 現時点での一〇〇パーセントが見える、ということです。
それまでは、
 カイゼン、カイゼンと言われ、
 どこまでやったらいいのか、
 決められていませんでした。
より良く、
 昨日より今日……。
もちろんその意識は今もありますが、
 かつてはエンドレスのイメージだった。


それが、少なくともこれをやれば、
 自分の責任は一〇〇パーセント果たせる、
 というものがプロセスの中にあるようになったのです。
だから、
 頑張りがいがある。
「よし頑張ろう」というモチベーションにつながっていく。
もっと精度を高めていこう、ということになる。
マニュアルはアップデートされていきますから、
 カイゼンの意欲もさらに湧くのです。


さらに、
 「目的・ゴール」をしっかり理解することで、
  自分の仕事が単なる作業ではなく、
  お客さまにしっかりつながった大事な仕事なのだ、
  ということがわかるということです。

 これが理解できれば、
  日々はつらつと働く「八百屋の親父」に誰もがなれる。

 自分の仕事の意義を実感しながら、
  仕事に向かうことができるのです。
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