金庫

作者:天使と悪魔

星新一のショートショートのイメージして作りました。

ある小高い丘の上に1つの家が立っていた。
この家は大き過ぎず、小さ過ぎず、ちょうどいい大きさだった。
この家の持ち主はあるN氏で、家族4人で住んでいた。
収入は多いものの、こじんまりとした生活をしていたためか、
今まで大きな事件も無く、まさに平穏そのものだった。


しかし、そんなに平穏な生活が続く程、世の中は甘くない。
ある日の夜、1人の泥棒が拳銃を持ってN氏の寝室に忍び込んだ。
「おい、起きろ。」
N氏は泥棒に叩き起こされた。
「なんだなんだ、泥棒か?」
泥棒はN氏に銃口を向けてる。
「まあそんな所だ。しかしそんな事はどうでもいい。今すぐ金目の物を出せ。出さなければここで殺す」
「まあまあ、そうあせるな。」
N氏は平然と答えた。
「さっきまで寝ていたのに持っているわけがなかろう。」
「それもそうだ、ではあの細長い金庫に入っている物を出してもらおうか。」
「あの金庫か。いいだろう。」
「ほう。以外にすんなり渡すのだな。」
「渡したくは無いが、あれも命あってこそだからな。」
「なかなか利口ではないか、では番号を教えてもらおう。」
N氏は番号を告げるとこう言った、
「物は奥にある。」
それを聞くと泥棒はN氏を縛り上げ、金庫の中に入っていった。
その瞬間バタンと音を立て金庫の扉が閉まり同時に鍵がかかった。
「おい、こら、出せ!」と泥棒が暴れ叫んだが金庫は金庫。そう簡単に開くものでは無い。


しばらくしてN氏はつぶやいた。
「開けようにも縛られては開けられるわけが無い。」
泥棒は金庫の中で暴れていたが彼は続けた。
「しかし、自分で開発した防犯用の金庫を自分が使う羽目になるとは思わなかった。
 あの金庫は犯人が中のものを取ろうとすると自動的にしまる仕組みになっているのだ。
 中で暴れてくれれば防犯装置が働いて明日の朝までに警察が来てくれるだろう。」
そうしてN氏は眠りについた。
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超能力者花子さん

作者:けろよん  

 花子さんは超能力者だ。
 生まれた時から空を飛んだり、別の場所にワープしたり、見えない電波と交信したり、手を触れずに物を浮かべたりすることができた。
 ある日、ひょんなことから花子さんが超能力者だということがばれてしまった。
 その日は雨上がりの日で花子さんは水たまりを観察するのに忙しかったんだけど、あまりみんながうるさく言うものだからしかたなくテレビ局に行ってやることにした。
 テレビ局に行くとカメラを向けられた。
「はーい、笑ってくださーい」
 なんて言うものだから仕方なく笑ってやった。笑いに弾けるようにテレビカメラが爆発した。
「わたしの笑顔は100億ボルトなんです」
 騒がれるのも面倒なのでアメンボウでも理解出来るように花子さんは簡潔な説明を試みた。相手はもう笑ってくださいとは言わなかった。花子さんは人間とはあまり会話をしたことは無かったんだけど、その日のことで人間はアメンボウよりも融通が効く生き物だということが理解できた。
「花子さんは超能力を使えるそうですね。それじゃあ、ちょっと見せてくれますか」
「あれ」
 司会者の人にマイクを向けられ、花子さんは仏張面で爆発炎上して消火作業に追われているテレビカメラを指さした。
「まあ、あれも超能力の一つですね。それじゃあ、今度はこのスプーンを曲げてくれるかな」
 花子さんの前にわざわざ豪勢な台車に乗せられて一本のスプーンが運ばれてきた。花子さんはそれを普通に手に取り、指を当てて曲げた。
「曲がりました」
 花子さんはそれをお茶の間の人達にもよく見えるように向けてやった。
「違うんだよ、花子さん。僕たちは花子さんが超能力でスプーンを曲げるところを見たいんだよ」
「やってみます」
 司会者の人に新しいスプーンを手渡され、花子さんは超能力でそれを曲げようと念をこめた。
 客席の一番後ろの人の首がクイッと曲がった。狙いを外したらしい。スプーンは細いし光ってるから狙いがつけにくい。
 6回ばかり失敗したが、7回目でなんとかスプーンを曲げることに成功した。客席からパチパチと拍手が上がった。
 花子さんはあまり人前に出たことは無かったけど、ほめられると妙にこそばゆかった。
「いやあ、凄いなあ花子さんは。それじゃあ、次はこれを持ち上げてくれるかな。超能力でね」
「はい、頑張ります」
 花子さんの前に一つの石が置かれた。花子さんはそれを持ち上げようと念を送った。さっきの今で照れ臭くてつい張り切って力を入れ過ぎてしまう。
 地球が動いてしまった。太陽から遠ざかるように結構な距離を移動した。環境に適応出来ない人間はあっと言う間に滅びてしまった。
 花子さんは最近では氷雨の日に出来る固まりを見ながら毎日を過ごしている。
 氷の星となった地球では今は誰もいない。
 それでも花子さんは今日も誰かに声をかけられるのを待っている。

DNAの悲劇

作者:よおおおおし

星新一風のショート・ショートです。

かなり短くまとめましたが、テーマぐらいは描けていると思います。 二十八世紀。ついに地球外生命体がこの星を訪れた。
 SF映画とはかなり違う形のものだったが、大型のUFOに乗って、アメリカの片隅に突如として現れたのだ。
「信じられん。本当に宇宙人がいたとはな。しかも我々が観測できなかった外宇宙から来たらしい。きっととんでもない科学技術を持っているだろう。しかし、いったいどんな意図でやってきのだろうか」
 国連の会議室には各国の代表者が勢ぞろいしていた。何日も顔を突き合わせながら、あーでもないこーでもないと議論を続け、ようやく宇宙人との会見にこぎつけた。
 その席に、宇宙人はなぜか真っ黒なフードを頭からかぶって現れた。
「まず、我々に、地球という星に対しての敵意がないということを表明しておく」
 翻訳機は宇宙人が用意していた。
「平和的交流が望みだ」
 会議室には安堵のため息が漏れた。
「そもそも我々には争いという概念がない。長いわが星の歴史においても、戦争なぞ一度も起こしたことはないし、社会は常に平等だった。平和と平等こそが我々の理念だ。この星においても我々はそう振舞いたい」
 会議室にいた人間全員が拍手でその言葉に答えた。
「しかしひとつ問題がある」
 そう言うと、宇宙人は黒いフードを取った。
 タコともイカともつかない不気味な顔が現れる。
 国の代表者の中には、あまりの醜悪さに顔を青くする人間までいた。
「あなたたちは遺伝子がほんの少ししか違わないサルやゴリラでも檻に閉じ込めている。この外見ではとても満足のいく交流はできないだろう。が、対策はある」
「いったいどうすればいい?」
「我々にヒトの肉体を提供していただきたい」
 会議室がざわついた。
「なにも生きた人間を提供してくれというわけではない。DNAのデータだけでもいいのだ。生命活動を維持している肉体があれば、我々のテクノロジーで、我々の意識をその肉体に移すことができる」
 地球側にも技術的に難しいことはなかった。
 クローン技術はとっくの昔に完成していたのだ。
 DNAの解析ももう何百年も前に終わっている。
 特に反対する人間はいなかった。宇宙人のテクノロジーに対する欲求が強かったのだ。
「ありがとう。ヒトの肉体を得ればあなたたちと我々は末永く付き合っていける。先に言ったとおり、我々は戦争をしたことがない。差別も、格差を設けたこともないのだから」

「そうか、あんたモグリか」
 薄汚いバーで男が二人、話をしていた。
「心配するな。突き出したりはしないよ」
 モグリとは人間の身体を持った宇宙人のことである。
 外見上の違いはまったくない。器具を使っても調べる手段はほとんどなかった。
「ありがとう。まったく。最近は自分の出自も大きな声で言えやしない」
 宇宙人が到来してから一年もしないうちに戦争が起きた。宇宙人の科学技術をめぐっての争いだ。しかも本来なら仲介者となるべき宇宙人もそれぞれの勢力に肩入れして戦火を拡大させ、今現在、地球は大混乱に陥っている。
「それもこれもこの身体のせいだ。DNAのせいだ」
 宇宙人は酒をぐっとあおった。
「とにかく欲望が多い。性欲、食欲、支配欲。抑えようとしても抑えきれない。そして欲望を満たしたときになんてすばらしい気分になってしまうんだろう。これでは争いが起きるのは自明の理だ」
「あんたら、地球に来たとき、あれだけえらそうなことを言ってたじゃないか」
「我々は本当に戦争なんて、争いなんてしたことなかったのに……。我々の星は平和で美しかった。そんななかで誰も争おうなんて思わなかったんだ」
「地球人がそのことについてどう思ってるか知ってるか?」
「どう思ってるんだ?」
「あんたらは地球に来たとき、口からでまかせばかり言ってまんまと人間の身体を手に入れた。手に入れたらさっそく戦争を起こして、この星を内側から支配しようとしているんだって」
「そんなバカなことがあるか。それこそ人間の陰謀だ。我々には侵略の意思なんてなかった。それなのに……。ああ、やっぱりこの身体のせいだ」
「そんなに言うんだったら、人間の身体なんて捨てちまったらどうだい?」
「それは……」
 宇宙人はコップの酒を一息で飲み下した。
「それはできないな。一度手に入れたらそうそう手放せるもんじゃないんだ。これだけ……。これだけすばらしい肉体は」

覗き見できる頭の中は

作者:衣乃 城太  

 この世の中はしばしば狂っている。昔の人々はそんなことなかったらしいが、いつからかこんなことになってしまった。
 進化とは人を腐らせる。幸せにせず、堕落させる。
 繋がりを断ち切り、誰もが心を失う。
 彼らがまず排除するのは、進化できなかった彼らの言うところの下等人類だ。
 つまりは、私だ。
 私は世界で唯一進化に対応できなかった人類。世界最後の下等人類だ。
 私の思考は進化した彼らにとっては呼吸をするように読み取れるものだ。
 そう、彼らの進化とは思考の読み取り。サイコメトリーだ。
 ゲームには負け、仲間にはいれてもらえず、誰とも何もない。世界からの拒絶。
 私の考えは彼らに分かり、彼らの考えは私には一生分からない。
 この理不尽を受けて、私の頭がおかしくなるのに時間はいらなかった。
 回りを睨み付け、ただ何も考えず、考えたとしても『殺す』か『死にたい』のどちらかだった。
 私はこの年まで生きたが、もちろん家族など持てるはずもなかった。面白い観察対象として近寄って来た人間もいた。一度ムカついたので辱しめを受けさせてやったが、そいつはなぜか嬉しそうだった。変態か。
 いつしか私の回りには観察する人間が増えた。子供にまで私の姿を観察させるやつがいた。この世は末期だと、頭では思わずに思う。
 私はそろそろ死ぬのだろう。その時には観察者共が私の事を記録してくれるはずだ。『最後の下等人類、死ぬ』なんてパンダみたいにニュースになれば面白い。
 ああ、くそ食らえみたいな人生だなあ。」







「・・・・・・でね、向かいのおじいさん、ついに亡くなったそうよ。最期は家族全員に看取られたんですって。」
「奥さんも大変だったわよねぇ。幼なじみで。」
「あのおじいさんずーっとぶつぶつぶつぶつ何か喋ってるんですもの。」
「頭に障害があったのよ」
「献身的介護ねぇ。」

とあるスイッチ

作者:レイアクト  

 タクシー運転手である男は、夜の街中をドライブがてらに走り、客を探していた。すると一人の老紳士が手を上げたので、車に乗せてあげた。時間的に、最後の客であった。
 スーツ姿にステッキを持った老紳士は、乗車した時から何かに怯えるように身体をせわしなく動かしていた。男は何に怯えているのか多少の興味はあったが、余計な詮索は行わず、取留めのない話をすることで乗客の怯えを和らげようとした。老紳士はそれでも気を落ち着かせることなく、常に緊張した面持ちを崩さなかったが、男としては別にそれでもよかった。カウンセラーでもセラピストでもない男はただのタクシー運転手でしかないので、乗客を目的地にまで連れていけばいい話だった。
 そして数十分後に目的の場所に着いた。降りる際に老紳士が男に語りかけた。
「さっきは私のために話しかけてくれてありがとう。お礼と言ってはなんだが、これを受け取ってくれないかね」
 老紳士が鞄から取り出したのは細いスイッチのようなものだった。ペンライトのような形をしていて、光が照射される部分に親指サイズのボタンが付いている、コードはついていなかった。遠隔操作用スイッチのようだった。そのよく分からない代物を見て、男はかぶりを振った。
「いや、乗車代以外は受け取れませんよ」
 男はきっぱりとその贈呈を断った。だが老紳士は予想以上に食い下がってきた。
「頼む、お願いだ。私を助けるためだと思って何も言わずに受け取ってくれ。このスイッチをどうにかしろとは言わない。ただ持っとくだけでいいんだ」
 切迫した態度でスイッチをぐいぐい押しつけてくるので、男は仕方なく受け取った。スイッチを手放した老紳士は、乗り込む時とは打って変って軽やかな足取りで夜の街に消えていった。

 仕事が終わった男は木造アパートに帰宅した。未婚で彼女もいない一人暮らしの男は、買ってきたビールを開けて仕事の疲れを癒した。つまみをかじり、タバコを盛大にふかし、希少な自由時間を満喫した。そして何とは無しにテレビを眺めていると、男は老紳士から貰ったスイッチのことを思い出した。
 別れ際に老紳士は「絶対にこのスイッチを押してはいけない。戸棚の奥にでも隠しておいてくれ」と言っていた。だが、絶対にするなと言われたら、逆にしてしまうのが人の性。御多分にもれず、男はなんの躊躇もなくスイッチをカチリと押した。
 するとバラエティ番組を放送していたテレビが突如ニュース速報に切り替わった。内容は、全世界で唯一の独裁国家であるK国が、軍事国家のA国に核ミサイルを発射したという驚くべきものだった。その非現実的なニュースに男は興奮し、手に持っていたスイッチを偶然にもまた押してしまった。するとニュース番組で続報が流れ、K国が二発目のミサイルを発射したという情報を発信した。
 そのニュースを見た男は、急に酔いも興奮もさめ、右手に持っているスイッチをジッと眺めた。
『絶対にそのスイッチを押してはいけない』
 老紳士の声が思い出される。そして偶然と片付けるには余りにもタイミングの良すぎる今の出来事。
 鈍い光を放つペンライト型のスイッチが実はとんでもない代物なのでは、と男は思い始めた。男は慎重な足取りでそのスイッチを戸棚に隠し、明日の仕事のために早めに就寝することにした。
 そのスイッチをもう一度押す勇気はなかった。

 その一時間後。住宅街の一角で火事が起こった。
 全焼したのは木造アパートの一室で、亡くなったのはその部屋に住むタクシー運転手の男だった。火元は消し忘れた煙草の吸殻だった。
 消火にあたった消防員が全焼した部屋を散策すると、一つだけ焼け焦げが全くついていない物が転がっていた。ペンライトのようだったが、よく見るとボタンのようなものが付いているので、何かのスイッチだと分かる。
 そのスイッチを見つけた消防員には特殊な性癖があり、小学生の時に、学校に設置されている非常ベルを意味もなく何度も押して周りに迷惑をかけたという前科を持っていた。そんな癖というか衝動を抑えきれるはずもない消防員は、火災現場から見つかったよく分からないスイッチをなんの躊躇もなく押した。何度も、何度も何度も押した。
 カチッ。カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチッ。

 その数秒後。A国の核ミサイルが全世界の主要都市に向けて一斉に発射された。
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