TPPに関するミスリード(1/3)

第192回 TPPに関するミスリード(1/3)2013/02/19 (火) 12:48
 
安倍総理大臣の訪米が近付き、
またもや
 TPP(環太平洋経済連携協定)に関する
 マスコミのミスリードが激しくなってきた。 
 
何しろ、
巨大与党となった自民党において、
 
TPP反対派(「慎重派」ではなく
明確な「反対派」)は
 全議員の六割を超えるのだ。


自民党の「TPP参加の即時撤回を求める会」に参加した国会議員は、
 本稿執筆時点で233人を数える。

自民党の議員数は
 衆参合わせて378人。
元閣僚級の政治家など立場を明らかにしていない議員の中にも、
 TPP反対派が少なくないのだが、
 明確な「交渉参加すら反対派」である

「TPP参加の即時撤回を求める会」だけで
 六割を超えているのだ。
 
それに対し、
 TPP交渉参加賛成派の有志が集まる「環太平洋経済連携に関する勉強会」は、
 わずかに35人。

明確なTPP推進派 35人 
 対 明確なTPP反対派 233人。
これが自民党の現実なのだ。

 
無論、与党や国民の大多数が反対であっても、
 日本国家のためにやらなければならない政策というものはあるだろう。
 
とはいえ、
 未だにまともな「メリット」一つ示せないTPPが、
 国民の民意で選ばれた議員たちの多くが反対する中、
 強行しなければならないような案件なのだろうか。

筆者は、
TPPに反対する理由は
 100でも上げられる。


それに対し、
 メリットは何なのか?


「アジアの成長を取り込む!」
 TPP参加国、及び参加予定国の中のアジアの国々とは、
 全て日本はEPAを結んでいる。

別にTPPに入らなくても、
 タイ、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、ベトナムの「成長」は取り込めるのだ。

前記五か国以外に、
 TPPにアジアがあるのか?

TPP関連諸国のGDP2011年版(単位:十億ドル)
出典:JETRO

上記の通り、カナダやメキシコを加えてさえ、
 
日米両国のGDPは
 全体の八割近くに達している。


日本にとって、
 TPPとはアメリカだ。
逆に、
アメリカにとってTPPとは
 日本なのである。
 
何しろ、
アメリカのオバマ大統領は
 一般教書演説でTPPについて触れ

 
「輸出を促進し、
  米国の雇用を増やし、
  アジアという成長市場に参入しやすくする」
 
 とメリットを説明したわけである。


日本にとっての
 TPP参加のメリットについては、
 未だに説得力がある話を聞いたことがない


が、
アメリカの方は明々白々なのだ。

すなわち、自国の雇用改善だ。

 
当たり前の話だが、
 アメリカが製品なりサービスの輸出で
 自国の雇用を改善した時、

必ず「反対側」の国で雇用が失われている。


アメリカが自国や他国の需要に充てる
 製品やサービスを生産するということは、
 その分だけ「他国で生産されない」という話になるためだ。
 
上記の類のことを書くと、
 反射的に、
 「リカードの比較優位論によると、
 自由貿易は両国で雇用を改善する」
 
などと言い出す人がいる。
残念ながら、リカードの比較優位論は、
 幾つかの条件が満たされなければ成立しない。

代表的な「条件」を二つだけ挙げておく。

◆自由貿易に参加する全ての国で「完全雇用」が達成されていること
◆国家間の資本移動の自由が無いこと
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2013年01月28日

2013年01月28日更新
第189回 インフレの世界(2/2)

ポイントは、日銀とのアコード(合意文書)、
 日銀法改正、そして日銀総裁、副総裁人事である。

いずれにせよ、
大切なことは
「政府が日銀に責任を負わせることができるか、否か」
 になる。

責任を取る必要がないとなれば、
 日本銀行は
 絶対にまともに仕事をしないだろう。


これは別に日銀に限らず、
 どんな組織であっても同じだろうが。
 
安倍首相率いる
 現在の日本政府は、
 インフレ目標2%に向けて動き出している


これは、
 一年前と比べると信じられないような
 「良い変化」だが、

×例によりマスコミからは、
 「物価上昇で国民生活が破壊される!」 
 系の批判が高まってきている。


この手の「反デフレ対策」キャンペーンにおいて、
 特に使われるのはガソリン価格だ。(価格上昇速度が速いため)

×「ガソリン価格が先月と比べて10円も値上がりした! 
 もはや生活が成り立たない!」

 
などと、
 マスコミはやってくるわけである。
 だが、ちょっと待って欲しい。
 
ガソリン価格が一か月前と比べ10円値上がりしたとして、
 一般庶民は月にどれほどのガソリンを消費するのだろうか。


最近は
 1リットル20kmを下回る燃費の自動車を見かけるのは珍しいと思うが、
 仮に15kmとしよう。

70リットルのガソリンタンクを一杯にすると、
 1050km走れることになる。

一か月に1000km走るとなると、
 これは都会住民にはまず不可能で、
 地方の住民にとっても決して少なくはない走行距離だ。

だが仮に
 一か月に1000km走る家庭があったとしても、
 月に70リットル満タンにすれば十分ということになる。

すなわち、
 ガソリン価格が10円値上がりしたとき、
 月に増える負担は700円ということである。

 
ところで、
 現在の日本政府のインフレ対策が
 「何」を目指しているかといえば、
 雇用の回復と所得の拡大になる。


何しろ、
 日本の平均給与所得は、
 ピーク時と比べて年間50万円も減っているのだ


【日本の平均給与(単位:万円)】
 出典:国税庁

仮に、
 安倍政権のデフレ対策で、
 平均給与が97年からの減少分の半分だけでも戻った場合、
 25万円の給与所得が増えることになる。

 すなわち、月にして2万円以上の給与アップだ。

無論、
 インフレになればすぐさま平均給与が25万円増えるという話ではない。
とはいえ、
 少なくとも安倍政権は「万円」の単位で
 平均給与を増やそうとしている政権であることを、
 国民は理解するべきなのだ。

×マスコミは、
 「ガソリン価格が10円上がり、
   家庭のガソリン費用がひと月に700円増えました」
 という話を持ち出し、

 「月に○万円」の給与所得アップを目標とする政策を妨害しようとしてくる。


この手のアンチ・キャンペーンに国民が流され、
 インフレを否定するようになると、
 日本国民が豊かになる日は永遠にやってこない。


逆に、
 日本国民が安易にマスコミのアンチ・キャンペーンに流されずに
 「豊かになる日本」を信じることができれば、
 遠くない将来にインフレ率が上昇に転じる。

インフレ率が高まっていけば、
 企業の投資効率が改善し、設備投資が増える。


無論、
 企業が設備投資を決断したとしても、
 海外直接投資におカネを投じられてしまうと、
 国内の雇用は増えない。

資本移動の自由化が進んでいるため、
 日本政府は国内の企業に「設備投資は国内に限定せよ」などと命じることはできない。

とはいえ、
 (国内への)設備投資減税や雇用関連の減税を実施することで、
 企業の国内投資意欲や人材獲得意欲をある程度は高めることができる。

安倍政権が打ち出した緊急経済対策に、
 設備投資減税や「雇用促進減税」などの施策が含まれているのは、
 もちろん上記の問題点をクリアするためである。

ちなみに、
 前回(第188回 財政ファイナンス(3/3))で日本のフィリップス曲線をご紹介した。

日本のように「美しいフィリップス曲線」が描ける国は、
 そう多くはない。

※我が国はインフレ率が2%超に達すれば、
  失業率が2%台に下がるのである。
 さすがに、日本にとってさえ、
  2%の失業率はほぼ「完全雇用」である。


×アメリカの場合、
 国内の製造業が減り過ぎ、
 インフレ率が上昇しても
 「貿易赤字が増えるだけ」という構造になってしまっている。


国内の需要を輸入で賄ってしまうと、
 生まれるのは「外国の雇用」であり、国内の雇用ではないのだ。

とはいえ、
 日本は違う。

我が国のインフレ率がGDPデフレータベースで2%に達し、
 「インフレの世界」に突入すれば、
 失業率は2%に接近するだろう。

さすがの日本といえども、
 失業率2%とは「完全雇用」に近い。


安倍政権のインフレ目標の裏には、
 国内で「完全雇用」を達成しようという、
 野心的な、とはいえ政治家としては当然の狙いがあるのだろう

2013/01/28 (月)

第189回 インフレの世界(1/2)2013/01/28 (月) 11:54

「インフレ率が3%、4%で推移するようになれば、
 これは世界が一変するよ」

 
 と言われたことがあるのだが、正直、ピンと来なかった。


現実には、
 インフレで物価が上がり、
 通貨価値が下がれば、

 企業は、
  「カネを借りて投資をすると、儲かる」
 
ということで、
 国内に設備投資をし、
 工場を建設し、店舗を開き、人材を雇い始めるだろう。

新たに雇われた人材は、
 既存のノウハウを受け継ぎ、さらに若い世代へと「国民経済の継承」が行われる。
 
人材獲得競争の段階に至れば、
 物価上昇率以上に給与所得が上がっていき、
 日本国民は「増え続ける所得で買えるものが増えていく」状態になる。

すなわち、
 豊かになっていく。

 



★これを信じられない場合
 
国民は消費や投資を減らし、
 貯蓄を増やし、
 「将来の漠然とした不安」に備えようとしてしまう。

結果的に、
 その国では消費・投資(GDP上の)不足が発生し、
 デフレギャップが拡大し、物価が下がる。

さらに、
 企業の投資意欲が減退し、
 リストラクチャリング推進により
 「物価下落以上に所得が下がる」状況に突入することになるわけだ。

すなわち、
 国民が貧しくなっていくのである。
 
逆に、
★豊かなっていくことを確信

 国民、特に企業は
 将来のために「設備投資」を始める。

家計にしても、
 将来のことなどあまりに気にせずに消費を拡大するようになるだろう。

すると、
 デフレギャップは発生せず、
 逆にインフレギャップ状態になり、物価が上がる。

物価が上昇に転じれば、
 投資効率が高まったということで、企業の設備投資はさらに増えていく。
 


要するに、
 我が国のデフレを引き起こしている「主犯」は国民なのだ。

「一体なぜ、日本はこれほど長くデフレが続いているんだ! 犯人は誰だ!」
 
と考え、
 答えを知りたかったならば、方法は簡単だ。
 鏡を見ればいいのである。

国民が「豊かになる」を信じることができず、
 将来のために備えるという極めて「合理的」な行動を採った結果、
 傷を深めていくのがデフレである。


国民というミクロレベルの合理的な行動が、
 マクロ(国民経済)に合成されると、
 極めて深刻な問題を引き起こしてしまう。

まさに、合成の誤謬だ。
 
この状況を打開できるのは、
 徴税権と通貨発行権を持つがゆえに、
 非合理的(利益を求めず)に動くことができる政府以外にはない。

ところが、
 日本の場合は国民の「豊かになるなど、信じられない」が行き過ぎ、

本来は
 「利益」など求める必要がない政府(何しろ政府はNPOだ)にまで、
 国民が「利益」(黒字)を求めるようになり、
 政府がまともな対策を打てず、
 国民経済の傷を深めていった。
 
というわけで、
 筆者は数年前から、
 日本国民の「成長できないという思いこみ」

すなわち
 「経済的自虐史観」を打破するべく、
 言論活動を続けてきたわけである。

とはいえ、
 筆者にしても、バブル崩壊時に社会人になった世代だ。

まともな「インフレの世界」など、見たことがない。

筆者から下の世代は、
 尚更だろう。
 
国民が全体で豊かになっていく。

かつては
 確かに存在した「インフレの世界」を、
 筆者は見たいのだ。

 
ところが、
 日本では相も変わらず政府のまともなデフレ対策を妨害しようとする人があとを絶たない。

政治家にしても、
 例えば自民党の政治家であったとしても
 「正しいデフレ対策」を理解していない人が少なからずいる。

この手の政治家の特徴は、まずは金融政策について、
 「金融緩和をしたところで、
  銀行から金が貸し出されなければデフレ脱却はできない」
 
と、
 以前は決して口にしなかった「金融政策の問題」について繰り返すことだ。

確かに、
 金融政策でどれだけ銀行の日銀当座預金残高を積み増しても、
 おカネが借り入れられ、
 消費もしくは投資として使われなければ、
 物価には何の影響も与えない。

彼らの言説に対し、
 「いや、金融緩和【だけ】だと効果がないからこそ、
  公共投資を中心とした財政政策を実施するのだろう」
  と反論すると、今度は、

「いや、必要なのは公共投資ではなく、規制改革だ」

 と、分けの分からない理屈をこねはじめるのである。

それに対し、

「ちょっと待ってくれ。
  規制改革とは、どうせ規制緩和のことだろう? 
  デフレで職が足りないところに、
   競争を激化させる規制緩和してどうするのか? 
  失業者を増やしたいのか?」

 
と反論すると、今度は、
 
「金融政策と財政政策を実施すればデフレ脱却できるかも知れない。
  だが、同時に規制改革も推進しなければ日本の成長力は高まらない」

 
と、
 もっともらしいことを言い出し
 何とか規制改革について支持を得ようとするのである。

 鬱陶しいことこの上ない。
 
現在の日本は、病人なのだ。

まずは病気(デフレ)から脱却するのが第一であり、
 その後の体質強化(成長力強化)など
 「後から」考えれば済む話である。


栄養失調で入院している病人に、
 
「体力をつけるためには、
  ジムで毎日一時間運動するべきだよ。さあ、やろう」

などと奨める医者はいないだろう。


さて、「デフレ脱却のためには金融政策と規制改革」と、
 アクセルとブレーキを同時に踏むことを推奨する
 政治家、評論家、学者たちも、
 一応「金融政策の重要性」については認めている。

すなわち、
 日本銀行問題だ。

とにかく、
 
日本銀行には「インフレの世界」を実現するための
 金融政策を「正しく」実施してもらわなければ、
 話が始まらない。


『2013年1月20日 読売新聞「インフレ目標2%、日銀が主体的に責任...甘利氏」

甘利経済再生相は20日、
 東京都内で記者団に対し、
 政府と日本銀行のデフレ脱却へ向けた合意文書に明記する
 2%のインフレ(物価上昇率)目標について、
 「日銀が主体的にその責任を負う」との認識を示した。
 
政府の役割に関しては「経済成長と財政再建にきちっと責任を持っていく」と説明した。
 
甘利氏は「合意に近付いている。
(日銀の)総裁と、認識の共有はかなりできている」と述べた。
 
安倍首相がみんなの党の渡辺代表と、
 次期日銀総裁人事を巡って協議したことについて、
 「総理の頭の中には、複数の方の名前があると思う。
  各方面の意見を聞き、絞り込みをかけているということだ」と述べた。』
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