とれたての短歌です

二週間先の約束嬉しくて
 それまで会えないことを忘れる(『とれたての短歌です。』)

何層もあなたの愛に包まれて
 アップルパイのリンゴになろう(『とれたての短歌です。』)

「今いちばん行きたいところを言ってごらん」
 行きたいところはあなたのところ(『とれたての短歌です。』)

まっさきに気がついている
 君からの手紙
  いちばん最後にあける(『とれたての短歌です。』)
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チョコレート革命

明治屋に初めて二人で行きし日の苺のジャムの一瓶終わる(『チョコレート革命』)

眠りつつ髪をまさぐる指やさし夢の中でも私を抱くの(『チョコレート革命』)

日曜はお父さんしている君のため晴れてもいいよ三月の空(『チョコレート革命』)

優等生と呼ばれて長き年月をかっとばしたき一球がくる(『チョコレート革命』)

「勝ち負けの問題じゃない」と諭されぬ問題じゃないなら勝たせてほしい(『チョコレート革命』)

愛することが追いつめることになってゆくバスルームから星が見えるよ(『チョコレート革命』)

幾千の種子の眠りを覚まされて発芽してゆく我の肉体(『チョコレート革命』)

地ビールの泡(バブル)やさしき秋の夜ひゃくねんたったらだあれもいない(『チョコレート革命』)

蛇行する川には蛇行の理由あり急げばいいってもんじゃないよと(『チョコレート革命』)

この星のオアシスとしてゆるやかに眠れる水を湿原と呼ぶ (『チョコレート革命』)

資本主義のとある街角必要に応じて受けとるティッシュペーパー(『チョコレート革命』)

昨日逢い今日逢うときに君が言う「久しぶりだな」そう久しぶり(『チョコレート革命』)

年下の男に「おまえ」と呼ばれていてぬるきミルクのような幸せ(『チョコレート革命』)

水蜜桃(すいみつ)の汁吸うごとく愛されて前世も我は女と思う(『チョコレート革命』)

深く厳しく我を愛せよ「地獄の門」刻んでいたるロダンの手より(『チョコレート革命』)

肉じゃがの匂い満ちればこの部屋に誰かの帰りを待ちいるごとし(『チョコレート革命』)

別れ話を抱えて君に会いにゆくこんな日も吾は「晴れ女」なり(『チョコレート革命』)

きつくきつく我の鋳型をとるように君は最後の抱擁をする(『チョコレート革命』)

星をもぐ女が夢にあらわれてマンゴスチンひとつ置いてゆきたり(『チョコレート革命』)

まっすぐな棒を一本刺してくれ脳のだるさにねじれるぼくに(『チョコレート革命』)

そそり立つなめらかな木のその下で泣くなよな傷ついたからって(『チョコレート革命』)

さりげなく家族のことは省かれて語られてゆく君の一日(『チョコレート革命』)

ブーゲンビリアのブラウスを着て会いにゆく花束のように抱かれてみたく(『チョコレート革命』)

「愛は勝つ」と歌う青年 愛と愛が戦うときはどうなるのだろう(『チョコレート革命』)

葉月里緒菜(はづきりおな)になれぬ多数の側にいて繰り返し読むインタビュー記事(『チョコレート革命』)

男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす(『チョコレート革命』)

妻という安易ねたまし春の日のたとえば墓参に連れ添うことの(『チョコレート革命』)

響き合う土の昔や君という鈴を盗むに耳を掩わず(『チョコレート革命』)

「です・ます」で話し続けている君の背景にあるファミリーランド(『チョコレート革命』)

家族にはアルバムがあるということのだからなんなのと言えない重み(『チョコレート革命』)

焼き肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き(『チョコレート革命』)

ぶらんこにうす青き風見ておりぬ風と呼ばねば見えぬ何かを(『チョコレート革命』)

ポン・ヌフに初夏(はつなつ)の風ありふれた恋人同士として歩きたい(『チョコレート革命』)

シャンプーを選ぶ横顔見ておればさしこむように「好き」と思えり(『チョコレート革命』)

かぜのてのひら

さみどりの葉をはがしゆくはつなつのキャベツのしんのしんまでひとり(『かぜのてのひら』)

「うちの子は甘えんぼうでぐうたらで先生なんとかしてくださいよ」(『かぜのてのひら』)

なんとなくわかったような気になって「登校拒否」とその子を呼べり (『かぜのてのひら』)

古文漢文の解答欄の余白には尾崎豊の詞を書いてくる(『かぜのてのひら』)

四万十(しまんと)に光の粒をまきながら川面をなでる風の手のひら(『かぜのてのひら』)

水平線を見つめて立てる灯台の光りては消えてゆくもの思い(『かぜのてのひら』)

四国路の旅の終わりの松山の夜の「梅錦」ひやでください (『かぜのてのひら』)

我という銀杏やまとに散りぬるを別れた人からくるエア・メール(『かぜのてのひら』)

折りたたみ傘をたたんでゆくように汽車のりかえてふるさとに着く(『かぜのてのひら』)

定期券を持たぬ暮らしを始めれば持たぬ人また多しと気づく(『かぜのてのひら』)

『あい』という言葉で始まる五十音だから傷つくつくつくぼうし(『かぜのてのひら』)

いくつかのやさしい記憶 新宿に「英(ひで)」という店あってなくなる(『かぜのてのひら』)

やわらかな秋の陽ざしに奏でられ川は流れてゆくオルゴール(『かぜのてのひら』)

海荒れしのちに鎮まりきらぬもの我が少女期のように内灘 (『かぜのてのひら』)

かぜのてのひら

はなび花火そこに光を見る人と闇を見る人いて並びおり(『かぜのてのひら』)

ここからは海となりゆく石狩の河口に立てば、立てば天啓(『かぜのてのひら』)

ひかれあうことと結ばれあうことは違う二人に降る天気あめ(『かぜのてのひら』)

お互いの心を放し飼いにして暮らせばたまに寂しい自由(『かぜのてのひら』)

今何を考えている菜の花のからし和えにも気づかないほど(『かぜのてのひら』)

男には首のサイズがあることの何か悲しきワイシャツ売場 (『かぜのてのひら』)

散るという飛翔のかたち花びらはふと微笑んで枝を離れる(『かぜのてのひら』)

母と娘のあやとり続くを見ておりぬ「川」から「川」へめぐるやさしさ(『かぜのてのひら』)

恋という遊びをせんとや生まれけん かくれんぼして鬼ごっこして(『かぜのてのひら』)

「風よりも火だね」と我を呼びし人葉桜のした火を抱かず行く(『かぜのてのひら』)

チューリップの花咲くような明るさであなた私を拉致せよ二月(『かぜのてのひら』)

多義的な午後の終わりに狩野派の梅だけがある武蔵野の春(『かぜのてのひら』)

かすみ草にいたるやさしさ花束のできあがりゆくさまを見ており(『かぜのてのひら』)

サラダ記念日

シャンプーの香をほのぼのとたてながら微分積分子らは解きおり(『サラダ記念日』)

親は子を育ててきたと言うけれど勝手に赤い畑のトマト(『サラダ記念日』)

「クロッカスが咲きました」という書きだしでふいに手紙を書きたくなりぬ(『サラダ記念日』)

ゆく河の流れを何にたとえてもたとえきれない水底(みなそこ)の石(『サラダ記念日』)

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日(『サラダ記念日』)

白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる(『サラダ記念日』)

なんでもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き(『サラダ記念日』)

さくらさくらさくら咲き初め咲き終りなにもなかったような公園(『サラダ記念日』)

思いきり愛されたくて駆けてゆく六月、サンダル、あじさいの花(『サラダ記念日』)

自転車のカゴからわんとはみ出してなにか嬉しいセロリの葉っぱ(『サラダ記念日』)

「スペインに行こうよ」風の坂道を駆けながら言う行こうと思う(『サラダ記念日』)

愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人 (『サラダ記念日』)

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