「2012年問題」は発生するか?

団塊世代をめぐる「2012年問題」は発生するか?

「2007年問題」から「2012年問題」へ?

2007年には、
 「団塊の世代」が60歳に到達することから、
 大量の定年退職者の発生が予想されました。

これにより、
労働力の減少や企業内の技術・ノウハウの継承の断絶など、
 様々な問題が生じるのではないかと懸念されました。


これが、
 いわゆる「2007年問題」です。
 
しかし、
 多くの企業において60歳定年後の継続雇用が進んだことなどもあり、
 2007年に大きな問題が生じることはありませんでした。

ただし、
この継続雇用も、
 年金(定額部分)の支給開始年齢までが目安と考えると、
 最長で65歳までです。


すると、
 2007年の5年後、
 「団塊の世代」が65歳に到達する2012年に、
 同じ問題が発生する可能性があります。

これが、
 いわゆる「2012年問題」です。

「団塊の世代」の人口は何人か
 
まず、
 いわゆる「団塊の世代」
 (第1次ベビーブーム世代、1947~1949年生まれ)の
 人口の大きさを見てみましょう。

 
2009年10月1日現在の「人口推計」によれば、
 60歳(1949年生まれ)の人口は、226万6000人です。

人口

我が国の人口ピラミッド(2009年10月1日現在)

 (資料)「人口推計(2009年10月1日現在)」(総務省統計局)
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技能継承と若手の早期離職防止

OBが若手に講習し技能継承と若手の早期離職防止

東京都大田区で金属製品の加工を手がける「同和鍛造」は、
 定年退職後のベテランの職人が、
 若手社員に技能の講習を行う制度を 2003 年から始めました。

ベテラン職人は
 嘱託として再雇用。

技術の指導は
 終業後の時間を使って行います。

同社は、
 フォークリフトのフォーク部分や半導体製造装置の部品などを加工しています。

熱した鉄を伸ばす作業は
 現在、主に機械で行われていますが、
 講習では自分の手でハンマーを振って鉄を伸ばす昔ながらの技術を教えています。

機械を操って思い通りの形に鉄を伸ばすには、
 鉄の変形をコントロールする感触が必要のため、
 加熱方法や材質などの知識を学ぶ学科の時間もあります。

この取り組みは技能だけでなく、
 仕事への興味や職場の仲間意識も育て、
 若手の早期離職を防ぐ狙いがあります。

講習を始める以前は
 採用しても、すぐに辞める若者が多かったのですが、
 講習を始めてから辞める若者が激減しました。

※現代うつの原因に
 職場の仲間意識の希薄があるかもしれない
 教え教えられる関係になることで
 一つの原因が減ることを期待します

 

4年間で新規採用した 26 人中で、
 退職したのは家業を継ぐなどの事情があった2人だけでした。

森谷博明常務は
 「中小企業の技術をしっかり継承していかないと、
   日本の製造業がだめになる」と強調しています。
(NIKKEI ONLINE より)

技能・スキルの断絶

企業における技能・スキルの断絶

団塊世代はこれまでの経済成長を高い技能とスキルで支えてきました。彼らの技能やスキルは、現役世代に確実に継承していかなければなりません。
そのための教育研修への取り組みは重要テーマとなり、これを怠ると技能・スキルが断絶され、企業の生命線が絶たれてしまうことにもなりかねません。しかし、彼らは組織で生き残り、キャリアアップするために、自身の経験やノウハウを自分の中に「閉じ込める」ことを選択してきました。そのため、経験やノウハウの継承は容易ではありません。

2007 年を迎える際に企業が実施した取り組みを見ても、業種や企業規模に格差が生じています。
2004 年度において正社員に対してOFF-JT(通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練・研修)を「実施した」
企業は 60.1%でした。
業種別にみると、「医療・福祉」で 89.1%、「金融・保険業」で 86.9%と高い一方、「飲食業・宿泊業」で 27.3%と低くなっています。
企業規模別にみると、規模が大きくなるにつれて実施率は概ね高くなっています(図4参照)。
また、2004 年度に正社員に対して、計画的なOJT(日常の業務につきながら行われる教育訓練)を「実施した」
企業は 48.9%でした


業種別にみると、「金融・保険業」で 74.0%と高い一方、「飲食店・宿泊業」で 18.2%と低くなっています。
企業規模別にみると、規模が大きくなるにつれて実施率は概ね高くなっています。

以上のように、企業規模が大きいほど教育への取り組みがなされており、大企業では2007年時点における団塊世代の退職による影響はさほど大きくないといえます。また、現段階で特に教育への取り組みが進んでいなくても、大企業の多くでは団塊世代退職者の再雇用や定年延長などの取り組みがされていることから、2012 年までの5年間で技術・技能・スキルの継承をすることが可能であるため、大きな問題はないといえます。


5 企業経営情報レポート
キルの継承をすることが可能であるため、大きな問題はないといえます。
日本経済新聞が行った主要企業 55 社への聞き取り調査によると、2006 年度における 60歳の定年を迎えた社員を再雇用する企業は、JR東日本約 1,800 人(定年退職者に占める再雇用者の割合 69.2%)、トヨタ自動車約 740 人(同 55.6%)、三菱重工業 461 人(同41.5%)、鹿島 193 人(同 63.9%)など、技術や技能の継承を目的とした再雇用が実施されています。(2007 年7月1日付朝刊記事より)
むしろ中小企業にとって、団塊世代の退職は今後深刻な事態になる可能性がありますので、その実態を次章で詳しく見ていきます。

技能伝承

先送りされた技術・技能伝承「2012年問題」

2012年4月26日(木曜日)

1. はじめに

2007年問題から5年。
団塊の世代が雇用延長により65歳を迎え、
 会社から引退する人材が増加する
 2012年問題が顕在化している。

この5年間、
 マニュアル作成や動画撮影などの伝承対策は講じているものの、
 多くの企業で思うように進んでいないのが実態のようである。

慢性的な人材不足と高齢化が進む建設業のように
 構造的課題を抱える業界では、
 特に問題が深刻である。

本来、技術・技能伝承は
 人材育成や事業継続
 付加価値向上のための
 
 取り組みの一環として活動する。
 
しかし、
 実態は
 目的を明確化しない

 活動自体の形骸化が見られる、

 目先の事業を優先し、
  先送りされているのが現状である。


そこで
 これまでの経験と現状の実態を踏まえ、

 今後、技術・技能伝承を進める上で
  取り組むべき課題と
  その対応策について提言をする。

2. 技術・技能伝承を取り巻く5つの誤解(2007年問題)

2007年以来、
 技術・技能伝承が思うように進まない

背景には、
 雇用延長や再雇用などの小手先の対応だけでなく、
 技術・技能伝承における

 「5つの誤解」が
  弊害となっている実態がある。

特に、中堅・中小企業は
 この状態が顕著だ。

これらの5つの誤解は、
 企業により、
 その状況と対応策が異なるが、
 確実な技術・技能伝承の実施には、
 
 これらの対応策を組み合わせた
  複合的な取り組みが必須となる。

この5つの弊害を通常業務の中で解決しつつ、
 技術・技能伝承を遂行できるような工夫が必要だ。

また
有効な技術・技能伝承には、
 この5つの誤解とその対応策を検討することから
 開始すべきなのである。

5つの誤解とその対応策を紹介する。

誤解(1)
  ×経験を積めば、誰でもノウハウを継承できる
 ×経験がない作業では、
  熟練者の行っていることを継承者は理解できない。
 ×習得に時間が掛かったり、
  習得そのものを諦めてしまうケースもある。
 


 つまり、
 熟練者から若手への一足飛びの伝承は難しく、
  中堅社員でワンクッションするなど、
  段階的な伝承が必要となる。

 また、
 継承者である若手が不足している点や
  習得する重点ポイントを事前に認識させることが必要で、
  組織構造(年齢・人員構成)や
  技術・技能体系を踏まえて、
 いつまでにどのようなことをどのようにして
  伝承するのかを明確にしておくことが重要である。

誤解(2)
 
 ×熟練者は積極的に伝承を支援してくれる
 ×団塊世代は
  自らが技術や技能を習得する際に
  先輩から教えられた経験が少ない
 ×若手へどのように教えていいのか分からない。
 ×熟練者が自分のノウハウを教えることにより、
  自分自身の仕事が無くなるという不安感もある。 


 このような状態に陥らないためには、
  熟練者に対して
  若手へ伝承することのメリットを十二分に理解させ、
  保身に陥らないような対策をしたり、
  熟練者をサポートするアドバイザーを設置するなどの工夫が必要である。

誤解(3)

 ×若手は意欲的にノウハウを吸収する
 ×若手は自分自身に自信が無いのは分かっているが、
  何が自分に欠けているかが分からない。 
 


 この状態では、
  著しく伝承スピードが落ちるばかりか
  モチベーションも上がらない。

 これは
  若手が自分自身の将来像を描けないことが原因の1つとなっている。

 そのため、
 若手へ伝承すべきコア・ノウハウを技術・技能マップから抽出し、
 誰に何を、どのようにして継承するかを明確にして、
 若手に自分の未来像を抱かさせることが必要となる。

誤解(4)
  ×仕組みを作れば、後はうまくいく
 ×仕組みを作れば、
  後はなんとかなると考えているケースが多い。 
 ×そもそもマニュアル類は
  作成した段階から陳腐化が始まる
 ×ナレッジのような仕組みも
  情報の収集と利活用を活性化する取り組みがないと
  すぐに形骸化する。 



※ナレッジ【knowledge】
 知識・情報。

このようなことを防ぐには、
 仕組みを作る以前に
 会社や職場内で熟練者や若手を問わず、
  
 自然にノウハウを共有し、
  教え合う環境づくりが必要である。


  経営者や部門管理者の責任が大きい。


誤解(5)
  
  ×職場は、伝承の取り組みをサポートしてくれる
  ×部門管理者にとっては、
   目先の業務遂行が最優先事項であり、
   伝承は後回しになり、
   部門管理者が
    一番の抵抗勢力となっているケースがある。
 


これを防ぐには
 会社の制度や業務の中に
 伝承の仕組みと
 人事評価の仕組みを組み込む必要がある。


  また、
   熟練者と若手、第三者のアドバイザーなどによる
   振り返り会を定期的に実施し、
   コミュニケーションの活性化と
   新しい気づきを得る機会(場)を
   創出するといった工夫が必要となる。


3. 技術・技能伝承の新しい取り組み(2012年問題)

2012年現在、
 我が国では
 ますますグローバル化が進展し、
 また少子高齢化も加速している。

複数の熟練者に対して、
 ノウハウを受け継ぐ若手が
 1人という状況は
 目前に迫っており、

 また
 海外へのタイムリーな技術移転の重要性も増大している。

このような状況において、
 国内に残しておくコアの技術・技能と、
 海外へ移転しても問題がない技術・技能を見極め、
 いかに効率的に伝承や移転を進めるかが喫緊の課題となっている。

 現場力向上に向け、
  2007問題に加えて2012年の現在に取り組むべき

  3つの方向性を紹介する。

ICTを活用した技能の技術化

※ICT【Information and Communication Technology】(情報通信技術)
 情報(information)や
 通信(communication)に関する技術の総称。

 日本では同様の言葉として
  IT(Information Technology:情報技術)の方が普及しているが、

 国際的にはICTの方が通りがよい。

 総務省の「IT政策大綱」が
  2004年から「ICT政策大綱」に名称を変更するなど、
  日本でも定着しつつある。

 
作業の7~8割は、
 自動化(形式知化)することが可能な
 技術的(形式知的)な作業

残りの2~3割は
 人間が判断を行いながら作業を行う
 技能的(暗黙知的)な作業である。


 ※職種によっては、暗黙知的な作業比率が高いものもある

技術的な作業でも、
 投資対効果の関係から
 自動化の取り組みが遅れているものもある。

例えば、
 携帯端末に作業マニュアルや図面、閾値などを予め登録し、
 遠く離れた場所で、
 その携帯端末を使って作業を行い、
 必要に応じて本社や事務所と製品情報をやり取りする…

 といったICT技術を活用した
  ワンストップでの
  作業環境がすでに実現しつつある。

※ワンストップサービスとは
  一度の手続きで、
  必要とする関連作業をすべて完了させられるように設計されたサービス。


また、
 Big Data関連技術や
 新しいICT技術を活用し、

 作業手順や品質などの現場作業情報を
  グローバルで集約して
  日本から世界の生産をコントロールしたり、

  ノウハウを機械化(システム化)して
   内部をブラックボックス化するといったことも可能となる。

 海外進出時の技術・技能の見える化への危惧に対して、
  技術・技能伝承のバリエーションを備えるのである。

このようなICTを活用することで
 技能の技術化が可能となり、
 作業水準の向上
 (作業の効率化)や
 若手への技能伝承の負担軽減、
  高品質作業の維持・向上など、
  現場力向上に寄与することができる。

応用力を醸成する伝承の仕組み
ICTを活用した技術化を進めたり、
 ノウハウなどをナレッジとして蓄積していっても、
 昨年の東日本大震災やタイの洪水のような想定外の事態に際して、
 生産移転などに効果的に活用できなければ効果は限定的となる。

 それらの仕組みを
  より効果的に活用するためには、
  それを活用できるゼネラリスト
 (開発や製造現場、IT部門など複数の業務経験者)を育成し、
  
 技術や技能に明るい人材を
  計画的に育てておくことが大切だ。


※マニュアルと人材育成
 どちらを優先するべきか?

 人づくり、人材育成を優先するべきと考える

 マニュアルをつくれば
  人材が育成できると考えていいのだろうか

 人づくりを進めながら
  教え方を学び
 学んだ人が
  次の人を教える
 このような環境づくりをめざしたいものです

 人づくりは、マニュアルで教えるものではなく
  現地現物で教えなければ
  人は育たないのです

 
 これからの現場力向上には、
  環境変化や時代に応じ、
  既存の仕組みをベースに
  新たな価値やノウハウを生み出す応用力を
  醸成する技術・技能伝承の仕組みが重要となる。

技術・技能伝承のフレームワーク整備
多くの企業では
 技術・技能伝承の必要性を認識しつつも、
 日々の業務に追われ、
 有効な対策がとられていない。

一方、企業を退職したが、
 まだ働ける団塊世代の技術者や技能者も多く存在している。

このような企業や退職者のニーズを把握し、
 伝承コーディネーターと
 退職した技術者や技能者を
 チームで国内外の企業に派遣し、
 技術・技能レベルの向上を支援するような
 フレームワークの整備が求められる

ICT技術を活用した技術・技能伝承へのサポートも可能となる。

技術・技能の喪失は
 企業にとって死活問題であり、
 
多くの企業でそのような状態が続けば、
 産業全体にとっても
 いずれは衰退への道をたどることを意味する。


企業グループや業界団体などにより
 人材クラウドを整備し、
 実効力のある技術・技能伝承支援の
 フレームワーク整備が求められる。

伝承スキーム

【図1】技術・技能伝承体系

4. おわりに

グローバル化が進展している我が国では、
 グローバル的な観点で
 企業DNAを次世代へ継承することが重要なテーマとなっている。

 海外での人材育成や技術移転では、
  日本の慣習である「阿吽の呼吸」などは通用しない。

 熟練者と若手がペアとなりマンツーマンで行う伝承は、
  日本人の場合は
  伝承者な視点(教えてあげる)からの伝承でも対応できるが、

  海外では通用しない。
  海外では、
   継承者な視点(いかにして学ばせるか)でのアプローチでないと
   技術移転はスムーズにいかない。

  日本国内に継承者を招き、
   日本の生活習慣を学ばせるといった工夫も必要となる。
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